ホツマツタヱ2、ワのヒマキ(地の巻)27



 (最新見直し2009.3.7日)

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【ホツマツタヱ2、ワのヒマキ(地の巻)27、御祖神船魂の文】
 タマヨリ姫に白羽の矢、神武天皇の誕生
 【原文カタカナ訳】      【語源考察】           【漢字読み下し】
 ミヲヤカミフナタマノアヤ   みをやかみふなたまあや     御祖神 船魂の文



 コノトキニ ミツホノミヤハ  このときに みつほみやは    この時に      ミツホの宮は

 トヨタマノ フタタヒノホル  とよたまの ふたたひのほる    トヨタマの     二度 上る

 ヨロコヒソ アマノコヤネト  よろこひそ あまのこやねと    喜びぞ       アマノコヤネと

 モノヌシト マテニハヘリテ  ものぬしと まてはへりて    モノヌシと     左右に侍りて
                                  (コモリ)

 ミチモノヘ ヤモヨロクサモ  みちものへ やもよろくさも    三千モノベ     八百万草も

 ヲサメシム サキニツミハト  をさめしむ さきつみはと    治めしむ      先にツミハと
                                             (コモリ次男)

 タケフツト イフキノミヤニ  たけふつと いふきのみやに    タケフツと     イフキの宮に
                                 (コモリ十男)

 フソヨカタ シテヲサメシム  ふそよかた てをさめしむ    二十四県      して治めしむ

 ホツマチハ カシマオシクモ  ほつまは かしまおしくも    ホツマ方は     カシマオシクモ
                                            (コヤネの子)

 ヒタカヒコ ミシマミソクイ  ひたかひこ みしまみそくい    ヒタカヒコ     ミシマミゾクイ
                                 (オシクモの弟)      (コモリ11男)

 ハラミヤニ モモヱアカタノ  はらみやに ももあかたの    ハラ宮に      百上県の
                                (ハラアサマ宮)      [枝]

 モノノヘト ユタカニヲサム  もののへと ゆたかにをさむ    モノノベと     豊かに治む

 ツクシヨリ シカトコフユエ  つくしより しかとこふゆえ    ツクシより     使人 請ふ故

 カンタチオ モノヌシトシテ  かんたちお ものぬして    カンタチを     モノヌシとして
                                 (コモリ長男)

 ハテツミト トモニミソフオ  はてつみと ともみそふお    ハテツミと     共に三十二を
                                            (筑紫三十二県)

 ヲサメシム カレニツミハオ  をさめしむ かれつみはお    治めしむ      故にツミハを

 コトシロト アスカノミヤニ  ことしろと あすかみやに    コトシロと     アスカの宮に
                            <カンタチの>

 ハヘラシム          はへらしむ            侍らしむ      
 
       フツキユミハリ        ふつきゆみはり              七月七日

 イセムスヒ カモタケスミニ  いせむすひ かもたけすみに    妹背結び      カモタケズミに
                                           (ハデヅミの子)

 ミコトノリ キサキオツマニ  みことのり きさきつまに    御言宣       「を妻に
                              <ホオテミ>

 タマフヘシ コフニマカセン  たまふへし こふまかせん    賜ふべし      請ふに任せん」

 タケツミハ コフハオソルル  たけつみは こふはおそるる    タケヅミは     「請ふは畏るる

 アメノママ ミホツメモフス  あめまま みほつめもふす    の随」      ミホツ姫 申す
                                           (コモリの母)

 ソフツホネ アレトワカマコ  そふつほね あれわかまこ    「十二      あれど 我が孫

 スケモトメ ウチメイソヨリ  すけもとめ うちめいそより    スケ モトメ     内侍 イソヨリ
                                   (コモリ長女)       (コモリ三女)

 シイオリノ ナカニイソヨリ  しいおりの なかにいそより    繁居りの      中にイソヨリ

 シルヒトソ チチニタツネハ  しるひとそ ちちたつねは    知る人ぞ」     父に尋ねば
                                 (ミヅハメの社    (コモリ)
                                     で会っている)

 ウナツキテ コレタケツミニ  うなつきて これたけつみに    頷きて       これタケヅミに

 タマワレハ カアヒノタチソ  たまわれは かあひたちそ    賜われば      カアヒの館
 
 ウカワミヤ メトルスセリメ  うかわみや めとるすせりめ    ウカワ宮      娶る スセリ姫
                                 (ホノススミ)         (コモリ六女)

 ミコオウム イミナウツヒコ  みこうむ いみなうつひこ    御子を生む     斎名 ウツヒコ

 コレノサキ アネタマネヒメ  これさき あねたまねひめ    これの先      姉 タマネ姫
                                             (コモリ次女)

 ハラヲキミ キサキニナシテ  はらをきみ きさきなして    ハラ央君      になして
                                 (ムメヒト)     (内宮)

 ミソクイカ イクタマハスケ  みそくいか いくたますけ    ミゾクイが     イクタマはスケ

 イクヨリハ ウチメトナレト  いくよりは うちめなれと    イクヨリは     内侍となれど

 タマネヒメ クニテルミヤト  たまねひめ くにてるみやと    タマネ姫      クニテル宮と

 タケテルト ウメハナツメカ  たけてると うめはなつめか    タケテルと     生めばナツメが

 ウフキナス サイワヒヒシハ  うふきなす さいわひひしは    産着 成す      幸菱は

 ムカシコノ ウツムロカコム  むかしこの うつむろかこむ    昔 この       埋室 囲む

 タケコケテ スツレハオエル  たけこけて すつれおえる    竹 焦げて      棄つれば 生える
                                               (「生ふ」の連体形)

 マタラタケ アヤニウツシテ  またらたけ あやうつして    斑竹         紋に写して

 ミハノナモ サイアイヘシト  みはも さいあいへしと    御の名も     "幸合し"と

 イセノミハ ウフキニモチユ  いせのみは うふきにもちゆ    妹背の御衣     産着に用ゆ
                                  (婚礼衣装)

 モトオリソ ホソノヲキレル  もとおりそ ほそのをきれる    本在ぞ       臍の緒 切れる
                                              (「切る」の連体形)

 タケモコレ          たけもこれ            竹もこれ      
 
       トキニアスカノ        ときあすかの              時にアスカの

 ミヤマカル ハハチチヒメハ  みやまかる ははちちひめは     罷る       母 チチ姫は

 ノチノヨオ イセニハヘレハ  のちお いせはへれは    後の世を      イセに侍れば

 ヲヲンカミ ヰオオナシクス  ををんかみ おなしく    大御神       居を同じくす
                                          <と>

 ツケキキテ ハハノナケキハ  つけききて ははのなけきは    告げ 聞きて     母の嘆きは

 ツキモナヤ カミノヲシヱハ  つきや かみをしゑは    「嗣も無や」    神の教えは

 ハラミヤノ クニテルオツキ  はらみやの くにてるおつき    「ハラ宮の     クニテルを嗣

 アマテラス ニキハヤヒキミ  あまてらす にきはやひきみ    天地照らす     ニギハヤヒ君」

 モニイリテ シラニワムラノ  もにいりて しらにわむらの    喪に入りて     シラニワ村の

 ミハカナス ノチニトクサノ  みはかなす のちとくさの    御墓 成す      後に十種の

 ユツリウケ トシメクルヒモ  ゆつりうけ としめくるひも    譲り 受け      年回る日も

 モニイリテ アスカノカミト  もにいりて あすかかみと    喪に入りて     アスカの神と

 マツルナリ          まつるなり            祭るなり      
 
       サキニミコナク        さきみこなく              先に御子 無く
                                      <アスカ君は>

 カクヤマカ アメミチヒメオ  かくやまか あめみちひめお    カグヤマが     アメミチ姫を
                                (アスカ君の右臣)

 ヱヱナシテ アニタクリカコ  ゑゑなして あにたくり    ゑゑなして     兄 タクリが子
                                             (カゴヤマ)

 タクラマロ ナオコトナセト  たくらまろ なおこなせと    タクラマロ     猶子となせど
                                (タカクラシタ)

 ハセヒメハ トミトニクミテ  はせひめは とみにくみて    ハセ姫は      臣と憎みて
                                (アスカ君の后)    (臣下の娘と子だと)

 ステサシム キミマタイカリ  すてさしむ きみまたいかり    棄てさしむ     君 また怒り
                                          (アスカ君)

 ハセオスツ カクヤマヲキミ  はせおすつ かくやまをきみ    ハセを棄つ     カグヤマ央君
                                            (クニテル)

 ハハトメシ コハメセトコス  ははめし はめせと    母と召し      子は 召せど来ず
                            <アメミチ姫を>       (タクラマロ)

 フトタマノ マコミカシヤオ  ふとたまの まこみかしやお    フトタマの     孫 ミカシヤを
                                (アスカ君の左臣)

 ツマトシテ ウマシマチウム  つまて うましまちうむ    妻として      ウマシマチ 生む

 ナカスネハ オモノトミナリ  なかすねは おもとみなり    ナガスネは     重の臣なり
 
 ミヤコニハ キミムツマシク  みやこには きみむつましく    都には       キ・ミ 睦まじく
                                (ミヅホ宮)

 ヤヲカフリ ツクシノソヤト  やをかふり つくしそやと    弥日 経り      ツクシの十八(万)と
                                             (筑紫での18万年)

 ヨソヰヨロ トシヘテヲサム  よそゐよろ としをさむ    四十五万      年 経て治む
                               (ミヅホでの45万年)

 アメヒツキ ユツランタメニ  あめひつき ゆつらために    天地日月      譲らんために

 ミコオメス スヘラヲミコハ  みこめす すへらをみこは    御子を召す     皇上御子は
                                 (ウガヤ)         (皇太子)

 ヲニフヨリ ミツホニミユキ  をにふより みつほみゆき    ヲニフより     ミツホに御幸
                                  (遠敷)

 マミヱスム トキニワカミヤ  まみゑすむ ときわかみや    見え 済む      時に若宮
                                             (ウガヤ)

 ナカニマス コヤネハヒタリ  なかます こやねひたり    中に座す      コヤネは左

 ミホヒコハ ミキニハヘレハ  みほひこは みきはへれは    ミホヒコは     右に侍れば
                                  (コモリ)

 アマキミハ ミハタノフミオ  あまきみは みはたのふみお    天君は       御機の文を

 ミテツカラ ヲミコニユツリ  みてつから をみこゆつり    己手づから     上御子に譲り

 マキサキハ ヤタノカカミオ  まきさきは やたかかみお    真后は       ヤタの鏡を
                                (トヨタマ姫)

 ササケモチ カスカニサツク  ささけもち かすかさつく    捧げ持ち      カスガに授く

 オオスケハ ヤヱカキノタチ  おおすけは やゑかきのたち    大スケは      八重垣の太刀
                                (モト姫か)

 ササケモチ コモリニアタフ  ささけもち こもりあたふ    捧げ持ち      コモリに与ふ

 キミトトミ ツツシミウクル  きみとみ つつしみうくる    君と臣       謹しみ受くる

 アマキミト キサキモロトモ  あまきみと きさきもろとも    天君と       后 諸共
                                (ホホデミ)     (トヨタマ)

 シノミヤニ オリヰテココニ  しのみやに おりゐここに    シノ宮に      下り居て ここに

 カミトナル          かみなる            神となる      
 
       トキヨソフスス        ときよそふすす              時 四十二鈴

 ヤモヰソヱ キワトシネウト  やもゐそ きわとしねうと    八百五十枝     際年 ネウト

 ハツキヨカ キミノモマツリ  はつき きみもまつり    八月四日      君の喪祭

 ヨソヤスミ ミコトニマカセ  よそやすみ みことまかせ    四十八 済み     御言に任せ

 オモムロオ イササワケミヤ  おもむろお いささわけみや    骸を        イササワケ宮

 ケヰノカミ ユエハオキナニ  けゐのかみ ゆえおきなに    "契の神"      故は翁に
                                             (シホツチ)

 ケヰオヱテ メクリヒラケル  けゐて めくりひらける    を得て      恵り 開ける
                                (きっかけ)          (「開く」の連体形)

 チオヱタリ カトテノケヰソ  たり かとてのけゐそ    鉤を得たり     門出の契ぞ
                                            (開運)

 カシハテハ ヒメハオモムロ  かしはては ひめはおもむろ    膳は        姫は骸
                                  (饗)

 ミツハミヤ ムカシナキサニ  みつはみや むかしなきさに    ミヅハ宮      昔 渚に
               
 チカイシテ ミソロノタツノ  ちかいて みそろたつの    誓いして      ミソロの竜の

 ミタマヱテ ナモアヰソロノ  みたまゑて あゐそろの    霊魂 得て      名もアヰソロの

 カミトナル          かみなる            神となる      
 
       タミツオマモリ        たみつまもり              田水を守り

 フネオウム キフネノカミハ  ふねうむ きふねのかみは    船を生む      キフネの神は

 フナタマカ フネハイニシヱ  ふなたまか ふねいにしゑ    船魂か       船は往にし方

 シマツヒコ クチキニノレル  しまつひこ くちきのれる    シマツヒコ     朽木に乗れる
                                              (「乗る」の連体形)

 ウノトリノ アツミカワユク  うのとりの あつみかわゆく    鵜の鳥の      アヅミ川 行く
                                            (安曇川)

 イカタノリ サオサシオホエ  いかたのり さおさしおほえ    筏 乗り       棹差し 覚え

 フネトナス コノオキツヒコ  ふねとなす おきつひこ    船と成す      子のオキツヒコ

 カモオミテ カイオツクレハ  かもて かいつくれは    鴨を見て      櫂を作れば

 マコノシカ ホワニナスナヨ  まこしか ほわになす    孫のシガ      帆ワニ 成す 七代

 カナサキハ オカメオツクル  かなさきは おかめおつくる    カナサキは     オカメを造る

 ソノマコノ ハテカミノコノ  そのまこの はてかみの    その孫の      ハテカミの子の

 トヨタマト ミツハメトフネ  とよたまと みつはめとふね    トヨタマと     水侍と船
                                           (水守り)

 ツクルカミ ムツフナタマソ  つくるかみ むつふなたまそ    造る神       六船魂
 
 ミコトノリ タカハフタカミ  みことのり たかふたかみ    御言宣       「タガ二神
                                 (ウガヤ)

 ハツノミヤ イマヤフルレハ  はつのみや いまやふるれは    果の宮       今 破るれば

 ツクリカエ ミツホノミヤオ  つくりかえ みつほのみやお    造り替え      ミツホの宮を

 ウツシヰテ ツネオカマント  うつして つねおかまんと    移し居て      常 拝まん」と
                                              <二神を>

 イシヘシテ ヒカセオオヤニ  いしへて ひかおおやに    居敷部して     平かせ 大弥に
                                           (地平き)

 ツクラセテ イトナミナリテ  つくらて いとなみなりて    造らせて      営み 成りて

 ミヤウツシ ミクライニツク  みやうつし みくらいつく    宮 移し       御位に就く

 ソノヨソイ アヤニシキキテ  そのよそい あやにしきて    その装い       着て

 タマカサリ カムリハヒクツ  たまかさり かむりはひくつ    珠 飾り       冠・

 ハラノノリ ハナオツクシテ  はらののり はなつくして    ハラの法      華を尽して

 ソノアスハ オオンタカラニ  そのあすは おおんたからに    その翌日は     大御宝に

 オカマシムカナ        おかましむかな          拝ましむかな

 キアトナツ ミクライナリテ  きあとなつ みくらいなりて    キアト 夏      御位 成りて

 イセニツク アマテルカミノ  いせつく あまてるかみの    イセに告ぐ     アマテル神の

 ミコトノリ トカクシオシテ  みことのり とかくして    御言宣       トカクシをして

 ワカミマコ タカノフルミヤ  わかみまこ たかふるみや    「我が孫      タガの古宮

 ツクリカエ ミヤコウツセハ  つくりかえ みやこうつせは    造り替え      都 遷せば

 アニツキテ ワノフタカミソ  つきて わのふたかみそ    天に継ぎて     地の悉守ぞ」

 ワレムカシ アメノミチヱル  われむかし あめのみちる    「我 昔       陽陰の道 得る

 カクノフミ ミヲヤモアミオ  かくのふみ みをやもあみお    橘の文       上祖百編を

 サツクナモ ミヲヤアマキミ  さつくも みをやあまきみ    授く 名も      御祖天君」

 コノココロ ヨロノマツリオ  このこころ よろのまつりお    「この心      万の政を    
                                      <地上の君が>

 キクトキハ カミモクタリテ  きくときは かみくたりて    聞く時は      も下りて

 ウヤマエハ カミノミヲヤソ  うやまえは かみのみをやそ    敬えば       神の御祖ぞ」

 コノミチニ クニヲサムレハ  このみちに くにをさむれは    「この道に     地 治むれば   
                                (上位者が謙る精神)

 モモツカサ ソノミチシトフ  ももつかさ そのみちしとふ    百司        その道 慕ふ

 コノコトク コレモミヲヤソ  ことく これみをやそ    子の如く      これも御祖ぞ」

 コノコスエ タミオメクミテ  このこすえ たみめくみて    「この子末     民を恵みて
                                                        <である>

 ワカコソト ナツレハカエル  わかそと なつれかえる    我が子ぞと     撫づれば還る

 ヒトクサノ ミヲヤノココロ  ひとくさの みをやのこころ    人草の       御祖の心」
                                (下民に萌す)

 スヘイレテ モモノヲシテノ  すへいれて もものをしての    「統べ入れて    百のヲシテの

 ナカニアリ アヤシケケレハ  なかあり あやしけけれは    中にあり」     「紋 繁ければ

 アチミエス ニシキノアヤオ  あちみえ にしきのあやお    味 見えず      の紋を

 ヲルコトク ヨコヘツウチニ  をることく よこへつうちに    織る如く      ヨコベツウヂに

 タテオワケ ヤミチノトコハ  たてわけ やみちとこは    経を分け      闇ちの床は
                                (縦糸/法)         (=床闇)

 アカリナス カスカコモリト  あかりなす かすかこもりと    明り 成す」     「カスガコモリと

 アチシラハ アマツヒツキノ  あちしらは あまつひつきの    味 知らば      天地つ日月の

 サカヱンハ アメツチクレト  さかゑんは あめつちくれと    栄えんは      天地 暮れど

 キワメナキカナ        きわめなきかな          極め無きかな」

 キミウケテ シカサルトキニ  きみうけて しかさるときに    君 受けて      使 去る時に
                                          (トガクシ)

 ミコトノリ フユイタルヒニ  みことのり ふゆいたるひに    御言宣       「冬 至る日に

 ヲヲマツリ アマカミトヨヨ  ををまつり あまかみよよ    大祭        天神と代々
                                 (大嘗会)

 スヘラカミ ユキスキノミヤ  すへらかみ ゆきすきみや    皇守        ユキスキの宮

 ヤマウミト トミコトタマハ  やまうみと とみことたまは    山海と       ト尊魂は   
                                (山・海の幸を     (ソロを守る)
                                     もたらす神霊)          

 ハニスキノ ナメヱニツケテ  はにすきの なめゑつけて    埴スキの      嘗会に告げて

 ヒトクサノ ホキイノルナリ  ひとくさの ほきいのるなり    人草の       祝 祈るなり」
                                          (栄・幸)
 
 フタカミハ ツネニタタスノ  ふたかみは つねたたすの    悉守は       常にタダスの
                                 (ウガヤ)

 トノニヰテ アマネクヲサム  とのて あまねくをさむ    殿に居て      普く治む

 タミユタカ サクススナレハ  たみゆたか さくすすなれは    民 豊か       さく鈴 成れば

 ウエツキテ ナススオヨヘト  うえつきて すすおよへと    植え継ぎて     七鈴 及べど
                                           (42万年)

 ナオユタカ ヨソコノススノ  なおゆたか よそこすすの    なお豊か      四十九の鈴の

 コモソヒヱ ハツホキアヱノ  こもそひ はつほきあゑの    九百十一枝     初穂 キアヱの

 ハツミカニ コヤネモフサク  はつに こやねもふさく    一月三日に     コヤネ 申さく

 キミハイマ ミヲヤノミチニ  きみいま みをやのみちに    「君は今      御祖の道に

 ヲサムユエ ヒトクサノヲヤ  をさむゆえ ひとくさをや    治む故       人草の親

 アメツチノ カミモクタレハ  あめつちの かみくたれは    天地の       神も下れば

 ミヲヤカミ ヨヨノミヲヤノ  みをやかみ よよのみをやの    御祖守       代々の上祖の
                                           (=幾代の上祖)

 ツキコナシ ソフノキサキモ  つきこなし そふきさきも    嗣子 無し      十二のも

 イカナルヤ トキニアマキミ  いかなるや ときあまきみ    如何なるや」    時に天君

 ワレオモフ ソミススヲイテ  われおもふ そみすすをいて    「我 思ふ      十三 老いて
                                            (78万歳)

 タネアラシ コモリモウサク  たねあら こもりもうさく    種 あら」     コモリ 申さく

 ヨツキフミ アリトテアマノ  よつきふみ ありとてあまの    「世嗣文      あり」とて アマノ

 オシクモニ ノリシテヨツキ  おしくもに のりよつき    オシクモに     宣して 世嗣

 ヤシロナス トキニオシクモ  やしろなす ときおしくも     成す       時にオシクモ

 ナアテナシ コヤネフトマニ  なあてなし こやねふとまに    「名宛 無し」    コヤネ フトマニ

 ウラナエハ ヤセヒメヨケン  うらなえは やせひめよけん    占えば       「ヤセ姫 好けん

 ヤヒノヰハ ナカノヤトナル  やひは なかなる    八一の謂は     中の "ヤ" となる  
                                 (ヲヤマ)       (「ヲヤマ」は中の音が「ヤ」)
                                           (ナカノヤ=中の屋=内宮)

 シノハラハ ハハトハラメル  はらは はははらめる    "シのハラ" は    母と孕める     
                                  (繁の腹)        (「孕む」の連体形)

 ヤノツホネ ウチメハナカノ  つほね うちめなかの    "ヤ" の局      内侍は中の
                                  (屋・宿・宮)       <また>

 クライナリ トシモワカハノ  くらいなり としわかはの    位なり」      年も若生の
                               (スケ・ウチメ・オシモ)

 ヤセヒメオ ソヒノキサキモ  やせひめお そひきさきも    ヤセ姫を      十一の后も

 ミナイハフ オシクモキヨメ  みないはふ おしくもきよめ    皆 祝ふ       オシクモ 清め

 ヨツキヤニ イノレハシルシ  よつきやに いのれしるし    世嗣社に      祈れば 著し

 ハラミヱテ ソヰツキニウム  はらみて そゐつきうむ    孕み 得て      十五月に生む

 ヰツセキミ ヤセヒメミヤニ  ゐつせきみ やせひめみやに    ヰツセ君      ヤセ姫 宮に
                                               (内宮)

 イルルマニ ツイカミトナル  いるるに ついかみなる    入るる間に     費い 神となる
 
 オチナクテ フレタツヌレハ  おちなくて ふれたつぬれは    御乳 無くて     告れ尋ぬれば

 コレノサキ カモタケスミト  これさき かもたけすみと    これの先      カモタケズミと

 イソヨリト ソミススマテモ  いそよりと そみすすまても    イソヨリと     十三迄も
                                          (78万年)

 コナキユエ ワケツチカミニ  なきゆえ わけつちかみに    子なき故      ワケツチ神に
                                            (ニニキネ)

 イノルヨノ ユメニタマワル  いのるの ゆめたまわる    祈る夜の      夢に賜わる

 タマノナノ タマヨリヒメオ  たまの たまよりひめお    "タマ"の名の     タマヨリ姫を

 ウミテノチ ヒタシテヨハヒ  うみのち ひたしよはひ    生みて後      養して 齢

 ソヨススニ タラチネトモニ  そよすすに たらちねともに    十四鈴に      タラチネ 共に
                                 (84万年)

 カミトナル カアヒノカミソ  かみなる かあひのかみそ    神となる      カアヒの神
 
 タマヨリハ モマツリナシテ  たまよりは もまつりなして    タマヨリは     喪祭 なして

 タタヒトリ ワケツチカミニ  たたひとり わけつちかみに    ただ一人      ワケツチ神に

 マタモフテ ユフササクレハ  またもふて ゆふささくれは    また詣で      斎 捧ぐれば
                                 (ワケツチ宮)

 ウツロイカ ウタカヒトワク  うつろいか うたかひとわく    ウツロイが     疑ひ問わく

 ヒメヒトリ ワケツチカミニ  ひめひとり わけつちかみに    「姫 一人      ワケツチ神に

 ツカフカヤ コタエシカラス  つかふかや こたえしからす    仕ふかや」     答え「然らず」

 マタトワク ヨニチナムカヤ  またとわく ちなむかや    また問わく     「余に因むかや」

 ヒメコタエ ナニモノナレハ  ひめこたえ なにものなれは    姫 答え       「何者なれば

 オトサンヤ ワレハカミノコ  おとさんや われかみ    威さんや      我はの子

 ナンチハト イエハウツロヰ  なんちはと いえうつろゐ    汝は」と      言えばウツロヰ

 トヒアカリ ナルカミシテソ  とひあかり なるかみてそ    飛び上り      鳴神してぞ

 サリニケル アルヒマタイテ  さりにける あるひまたいて    去りにける     ある日 また出で

 ミソキナス シラハノヤキテ  みそきなす しらはのやて    禊 なす        白羽の矢 来て

 ノキニサス アルシノオケノ  のきさす あるしおけの    軒に刺す      主の穢気の

 トトマリテ オモハスヲノコ  ととまりて おもはをのこ    止まりて      思わず男の子

 ウミソタツ ミツナルトキニ  うみそたつ みつなるときに    生み育つ      三つなる時に

 ヤオサシテ チチトイウトキ  さして ちちいうとき    矢を指して     "父"と言う時

 ヤハノホル ワケイカツチノ  やはのほる わけいかつちの    矢は昇る      ワケイカツチの

 カミナリト ヨニナリワタル  かみなりと なりわたる    神なりと      世に鳴り渡る
 
 ヒメミコオ モロカミコエト  ひめみこお もろかみこえと    姫・御子を      諸守 請えど

 ウナツカス タカノノモリニ  うなつか たかのもりに    頷かず       タカノの森に

 カクレスム ワケイカツチノ  かくれすむ わけいかつちの    隠れ住む      ワケイカツチの

 ホコラナシ ツネニミカケオ  ほこらなし つねみかけお     成し       常に御影を

 マツルナリ ミフレニヨリテ  まつるなり みふれよりて    祭るなり      御告れによりて
                                       <乳募集の>

 モフサクハ ヒヱノフモトニ  もふさくは ひゑふもとに    申さくは      「日似の麓に

 ヒメアリテ チチヨキユエニ  ひめありて ちちよきゆえに    姫 ありて      乳 良き故に

 タミノコノ ヤスルニチチオ  たみの やするにちちお    民の子の      痩するに乳を

 タマワレハ タチマチコユル  たまわれは たちまちこゆる    賜われば      たちまち肥ゆる

 コレムカシ カミノコナレト  これむかし かみなれと    これ昔       守の子なれど

 カクレスム モリニヰイロノ  かくれすむ もりいろの    隠れ住む      森に五色の

 クモオコル イツモチモリト  くもおこる いつもちもりと    雲 起る       出雲方森と

 ナツクナリ モロカミコエト  なつくなり もろかみこえと    名付くなり     諸守 請えど

 マイラネハ サオシカナサレ  まいらは さおしかなされ    参らねば      直御使 なされ

 シカルヘシ トキニイワクラ  しかるへし ときいわくら    然るべし」     時にイワクラ
                                            (コモリ13男)

 ウカカイテ ツカイオヤレト  うかかいて つかいやれと    窺いて       使を遣れど

 キタラネハ ミツカラユキテ  きたらは みつからゆきて    来たらねば     自ら行きて

 マネケトモ ウナツカヌヨシ  まねけとも うなつかよし    招けども      頷かぬ由

 カエコトス ワカヤマクイカ  かえこと わかやまくいか    返言す       ワカヤマクイが

 モフサクハ ヲシカトナラテ  もふさくは をしかとなら    申さくは      「御使人ならで
                                                (でなきゃ)

 コヌユエハ ワケツチカミオ  ゆえは わけつちかみお    来ぬ故は      ワケツチ神を

 ツネマツル メセハマツリノ  つねまつる めせまつりの    常 祭る       召せば祭の

 カクルユエナリ        かくるゆえなり          欠くる故なり」
 
 ミコトノリ ヤマクイオシテ  みことのり やまくいて    御言宣       ヤマクイをして

 メストキニ ハハコノホレハ  めすときに ははのほれは    召す時に      母子 上れば

 ミタマヒテ ウチナオトエハ  たまひて うちなとえは    見給ひて      氏名を問えば

 ヒメコタエ ヲヤノタケスミ  ひめこたえ をやたけすみ    姫 答え       「親のタケスミ

 イソヨリカ ナツクタマヨリ  いそよりか なつくたまより    イソヨリが     名付くタマヨリ

 ハテカマコ コハチチモナク  はてまこ ちちなく    ハデが孫      子は父も無く

 カミナリソ チチカナケレハ  かみなりそ ちちかなけれは    神生りぞ      父が無ければ

 イミナセス イツモノミコト  いみなせす いつものみこと    斎名せず      出雲の御子と

 ヒトカヨフ コトハモクワシ  ひとよふ ことはくわし    人が呼ぶ」     言葉も美し

 スキトホル タマノスカタノ  すきとほる たますかたの    透き徹る      珠の姿の

 カカヤケハ ミコトノリシテ  かかやけは みことのりて    輝けば       御言宣して

 ウチツホネ ヰツセヒタセハ  うちつほね ゐつせひたせは    内局        ヰツセ 養せば

 ミコノナモ ミケイリミコソ  みこも みけいりみこそ    御子の名も     ミケイリ御子ぞ

 ウムミコハ イナイイキミソ  うむみこは いないいきみそ    生む御子は     イナイイ君ぞ

 ミキサキト ナリテウムミコ  みきさきと なりてうむみこ    御后と       成りて生む御子

 カンヤマト イハワレヒコノ  かんやまと いはわれひこの    カンヤマト     イハワレヒコの

 ミコトナリ トキニタネコカ  みことなり ときたねこか    命なり       時にタネコが
                                            (アメタネコ)

 タケヒトト イミナチリハメ  たけひとと いみなちりはめ    "タケヒト"と    斎名 ちりばめ

 タテマツル アマキミミコニ  たてまつる あまきみみこに    奉る        天君 御子に

 ミコトノリ ツツノミウタニ  みことのり つつみうたに    御言宣       連の御歌に   

 コレヲシテ トヨヘルハタノ  これをして とよへるはたの   『これ ヲシテ     豊へる機の
                                ("タケヒト")          (政・治)

 ツツネニソナセ        つつねにそなせ          連根にぞなせ』
                              (この時点で既にウガヤは自分の力ではどうにもできない
                              世の変化を悟っていて、不可避の混乱の後にタケヒトが
                              再び世の秩序を回復し、ほつまに発展させて行くことの
                              願いを込めた連歌(続き歌)の発句であるように思われる。
                              どうにもならない変化とは、おそらくウヒヂニの時代に
                              起こったような「陽陰なる道」の変化であったと思う。)

 コレノサキ ハラノオシクモ  これさき はらおしくも    これの先      ハラオシクモ

 メシノホス オトトヒタチハ  めしのほす おととひたちは    召し上す      弟 ヒタチは
                                <カスガ退任のため
                                 鏡臣としてタガへ>

 ワカキユエ アハノコトシロ  わかきゆえ あはことしろ    若き故       阿波のコトシロ
                                           (イフキの宮ツミハ)

 ハヘルミヤ ハラカラナレハ  はへるみや はらからなれは    侍る宮       "ハラから" なれば
                                 (ハラ宮)     (またハラに侍るミゾクイとは兄弟)

 ニシヒカシ カヨヒツトメテ  にしひかし かよひつとめて    西・東       通ひ勤めて

 カナメシム ナモツミハヤヱ  かなめしむ つみはやゑ    要 占む       名もツミハ八重

 コトシロカ ミシマニイタリ  ことしろか みしまいたり    コトシロが     ミシマに至り
                                         (大阪府三島郡)

 ハラニユキ マタミシマヨリ  はらゆき またみしまより    ハラに行き     またミシマより
                               (静岡県三島市)
               
 イヨニユク ツイニチナミテ  いよにゆく ついちなみて    イヨに行く     遂に因みて
                              (伊予三島・大三島)

 ミソクイノ タマクシヒメモ  みそくいの たまくしひめも    ミゾクイの     タマクシ姫も

 ハラムユエ ワニノリアハエ  はらむゆえ わにのりあはえ    孕む故       ワニ 乗り 阿波へ

 カエルウチ ウムコノイミナ  かえるうち うむいみな    帰る内       生む子の斎名

 ワニヒコハ クシミカタマソ  わにひこは くしみかたまそ    ワニヒコは     クシミカタマぞ

 ツキノコハ イミナナカヒコ  つきのこは いみななかひこ    次の子は      斎名 ナカヒコ

 クシナシソ アオカキトノニ  くしなしそ あおかきとのに    クシナシぞ     青垣殿に

 スマシムル          すましむる            住ましむる     
 
       サキニツクシノ        さきつくしの              先にツクシの

 カンタチハ ソヲノフナツノ  かんたちは そをふなつの    カンタチは     ソヲフナツの
                                 (コモリ長男)

 フトミミオ ヤスニメトリテ  ふとみみお やすめとりて    フトミミを     ヤスに娶りて
                                         (筑前國夜須郡)

 フキネウム ノチモロトモニ  ふきねうむ のちもろともに    フキネ 生む     後 諸共に
                                         (カンタチとフトミミ)

 カミトナル オオモノヌシハ  かみなる おおものぬしは    神となる      オオモノヌシは
                                      <コモリ・カンタチ亡き今>

 フキネナリ トヨツミヒコト  ふきねなり とよつみひこと    フキネなり     トヨツミヒコと
                                           (ハテツミの子)

 ヲサメシム ノワサヲシエテ  をさめしむ のわさをしえて    治めしむ      伸業 教えて
                             <三十二県を>

 タミオウム          たみうむ            民を熟む      
 
       ヒトリオサムル        ひとりおさむる              一人 治むる

 オオナムチ ミツカラホメテ  おおなむち みつからほめて    オオナムチ     自ら褒めて

 アシノネサ モトヨリアラヒ  あしねさ もとよりあらひ    「葦の根方     本より散らひ

 イワネコモ ミナフシナヒケ  いわねこも みなふしなひけ    岩根方も      皆 伏し靡け
                                              (他動詞)

 ヲサムルハ ヤヨホニタレカ  をさむるは やよほたれか    治むるは      弥万年に誰か

 マタアラン ウナハラヒカリ  またあらん うなはらひかり    また現らん」    海原 光り

 アラハレテ ワレアレハコソ  あらはれて われあれはこそ    顕れて       「我 あればこそ

 ナンチソノ オオヨソニナス  なんちその おおよそなす    汝 その       おおよそに成す
                                             (巧く・幸に)

 イタハリソ オオナムチトフ  いたはりそ おおなむちとふ    ぞ」       オオナムチ 問ふ
                                 (成功)

 ナンチタソ ワレハナンチノ  なんちそ われはなんちの    「汝 誰ぞ」     「我は汝の

 サキミタマ クシヰワサタマ  さきみたま くしゐわさたま    先霊魂        奇偉業魂」

 サテシリヌ マツルサキタマ  さてしり まつるさきたま    「さて知りぬ    祭る 先魂

 トコニスム イヤカミスマス  とこすむ いやかみすま    どこに住む」    「否 神 住まず」

 ナンチオハ アオカキヤマニ  なんちおは あおかきやまに    「汝をば      青垣山に

 スマセント ミヤツクリシテ  すまんと みやつくりて    住ません」と    宮造りして

 ソコニオレ コナキカユエニ  そこおれ なきゆえに    「そこに居れ」   「子 無きが故に
                                        <フキネは>

 ミタルルソ コトシロヌシカ  みたるるそ ことしろぬしか    乱るるぞ      コトシロヌシが
                                             (ツミハ)

 ヱトノコノ クシミカタマオ  ゑとの くしみかたまお    兄弟の子の     クシミカタマを

 コイウケテ ツキトナスヘシ  こいうけて つきなすへし    請い受けて     嗣となすべし」
                                       <大物主の>

 ミヲシヱニ ミモロノソハニ  をしゑに みもろそはに    御教えに      ミモロの傍に
                                            (御諸山)

 トノナシテ コエハタマハル  とのなして こえたまはる    殿 成して      請えば 賜はる
                                (青垣殿)

 モフケノコ クシミカタマト  もふけのこ くしみかたまと    儲けの子      クシミカタマと

 ワカツマノ サシクニワカメ  わかつまの さしくにわかめ    若妻の       サシクニワカメ
                              <フキネの>

 モロトモニ スマセテヌシハ  もろともに すまぬしは    諸共に       住ませてヌシは
                                               (大物主フキネ)

 ツクシタス ヒタルノトキニ  つくしたす ひたるときに    ツクシ 治す     ひたるの時に
                                                 <クシミカタマは>

 コレオツク ハハコイタレハ  これつく ははいたれは    これを継ぐ     母子 到れば
                                 (大物主)      (ワカメと
                                          クシミカタマ)

 ノコシコト コノムラクモハ  のこしこと このむらくもは    遺し言       「このムラクモは

 アレマセル ミコノイワヒニ  あれませる みこいわひに    生れませる     御子の祝ひに
                                   (「ます」の連体形) (タケヒト)

 ササケヨト イイテイモヲセ  ささけよと いいいもをせ    捧げよ」と     言いて夫婦
                                               (フキネと
                                               ワカメ)
 
 カミトナル ヤスニオサメテ  かみなる やすおさめて    神となる      ヤスに納めて
                                           (夜須)

 マツルノチ ツクシヲシカノ  まつるのち つくしをしかの    祭る後       ツクシ御使の
                                     <クシミカタマに>

 ミコトノリ ノチニクシナシ  みことのり のちくしなし    御言宣       後にクシナシ

 カミトナル ハハニコワレテ  かみとなる ははにこわれて    神となる      母に請われて
                                         (タマクシ姫)

 ヲシカスツ カレニツクシノ  をしかすつ かれにつくしの    御使 棄つ      故にツクシの

 ミユキコフ          みゆきこふ            御幸 請ふ      
 
       トキニヰツセニ        ときゐつせに              時にヰツセに

 ミコトノリ タカノヲキミト  みことのり たかをきみと    御言宣       "タガの央君"と

 オシクモト クシミカタマト  おしくもと くしみかたまと    オシクモと     クシミカタマと

 マテニアリ タネコハミコノ  まてあり たねこみこの    左右にあり     タネコは御子の

 オオンモリ ミコタケヒトハ  おおんもり みこたけひとは    大御守       御子タケヒトは

 トシヰツツ マタイワクラハ  としゐつ またいわくらは    歳 五つ       またイワクラは
                                             (コモリ13男)

 ミヤウチノ ツホネアツカリ  みやうちの つほねあつかり    宮内の        預り

 アマキミハ ツクシニミユキ  あまきみは つくしみゆき    天君は       ツクシに御幸
                                 (ウガヤ)

 ムロツヨリ オカメニメシテ  むろつより おかめめして    ムロツより     オカメに召して

 ウトノハマ カコシマミヤニ  うとはま かこしまみやに    ウドの浜      カゴシマ宮に

 ミソフカミ ミカリオコエハ  みそふかみ みかりこえは    三十二守      恵りを請えば

 メクリミテ スタルオナオシ  めくりみて すたるなおし    恵り回て      廃るを直し
                                           (連体形)

 タエオタシ ミナヲサマルモ  たえたし みなをさまるも    絶えを治し     皆 治まるも

 イカツチノ カミノイサオシ  いかつちの かみいさおし    イカツチの     神の功

 ノコリアリ トトセニタミモ  のこりあり とせたみも    遺りあり      十年に民も

 ニキハヒテ ヨロトシウタフ  にきはひて よろとしうたふ    賑わいて      万歳 歌ふ

 ミヤサキノ キミノミココロ  みやさきの きみみこころ    ミヤサキの     君の実心

 ヤスマレハ ヨハヒモオヒテ  やすまれは よはひおひて    安まれば      齢も老ひて

 ハヤキシノ タカニツクレハ  はやきしの たかつくれは    早の       タガに告ぐれば

 オトロキテ ミコタケヒトト  おとろきて みこたけひとと    驚きて       御子 タケヒトと

 モリタネコ タカヨリイテテ  もりたねこ たかよりいてて    守 タネコ      タガより出でて

 ニシノミヤ オオワニノリテ  にしのみや おおわにのりて    ニシノ宮      大ワニ 乗りて

 ウトノハマ ミヤサキミヤニ  うとはま みやさきみやに    ウドの浜      ミヤサキ宮に
                                            (宮崎神宮)

 イタリマス          いたります            至ります      
 
       ミヲヤアマキミ        みをやあまきみ              御祖天君
                                            (ウガヤ)

 ミコトノリ タケヒトタネコ  みことのり たけひとたねこ    御言宣       「タケヒト・タネコ

 シカトキケ ワレツラツラト  しかきけ われつらつらと    確と聞け      我 つらつらと

 オモミレハ ヒトクサノミケ  おもみれは ひとくさみけ    思みれば      人草の食

 シケルユエ ウマレサカシク  しけるゆえ うまれさかしく    頻る故       生れ 賢しく

 ナカラエモ チヨハモモヨト  なからえも ちよももと    永らえも      千齢は百齢と

 ナリカレテ ワカヤソヨロモ  なりかれて わかやそよろも    萎り枯れて     我が八十万も

 モモトセモ ヨノタノシミハ  ももとせも たのしみは    百年も       世の楽しみは

 アイオナシ アマテルカミモ  あいおなし あまてるかみも    合い同じ      アマテル神も

 カエラセハ アノミチマモル  かえらは あのみちまもる    還らせば      天の道 守る
                   (尊敬)

 ヒトモナシ モロトモホムル  ひとなし もろともほむる    人も無し      諸共 褒むる
                                              (敬ふ)

 カミモナシ ナンチフタリモ  かみもなし なんちたりも    神も無し      汝 二人も

 ナカラエス イツセハコナシ  なからえ いつせなし    永らえず      イツセは子無し

 タケヒトハ ヨノミヲヤナリ  たけひとは よのみをやなり    タケヒトは     弥の上祖なり
                                          (=幾代の上祖)
                                            (連根)

 タネコラモ ヱトムソウチニ  たねこも ゑとむそうちに    タネコ等も     ヱト六十内に

 ツマイレテ ヨツキオナセヨ  つまいれて よつきなせよ    妻 入れて      世嗣を成せよ

 タケヒトハ トシソヰナレハ  たけひとは としそゐなれは    タケヒトは     年 十五なれば

 ワカカワリ タネコカタスケ  わかかわり たねこかたすけ    我が代り      タネコが助け

 ヲサムヘシ シラヤノヲシテ  をさむへし しらやのをして    治むべし      白矢のヲシテ

 タケヒトニ クニオシラスル  たけひとに くにおしらする    タケヒトに     地を領らする

 モモノフミ タネコニユツル  もものふみ たねこにゆつる    百の文       タネコに譲る

 ワカココロ サキニカカミハ  わかこころ さきかかみは    我が心       先には

 オシクモニ マタヤヱカキハ  おしくもに またやゑかきは    オシクモに     また八重垣は

 ワニヒコニ サツクオヒメカ  わにひこに さつくひめか    ワニヒコに     授くを姫が
                                            (タマヨリ姫)

 アツカリテ ワケツチミヤニ  あつかりて わけつちみやに    預かりて      ワケツチ宮に

 オサメオク ホツマナルトキ  おさめおく ほつまなるとき    納め置く      ほつま 成る時
                                                  →序 →23文

 オノツカラ ミクサノタカラ  おのつから みくさたから    自づから      三種の宝

 アツマリテ ミヲヤトナスカ  あつまりて みをやなすか    集りて       上祖と成すが
                                      <タケヒトを>

 ホツマソト ミヤサキヤマノ  ほつまそと みやさきやまの    ほつまぞ」と    ミヤサキ山の

 ホラニイリ アカンタヒラト  ほらいり あかんたひらと    洞に入り      アカンタヒラと

 アカリマス          あかります            上ります      
 
       ミコモオツトメ        みこつとめ              御子 喪を務め
                                            (タケヒト)

 ヨソヤスム ミソフアツマリ  よそやすむ みそふあつまり    四十八 済む     三十二 集まり

 アクルナハ ツクシスヘラキ  あくるは つくしすへらき    上ぐる名は     "ツクシ皇"

 コノヨシオ タカニツクレハ  このよしお たかつくれは    この由を      タガに告ぐれば

 モニイリテ ヒウカノカミト  もにいりて ひうかかみと    喪に入りて     "ヒウガの神"と

 マツリナス ヲニフニマツル  まつりなす をにふまつる    祭 なす       ヲニフに祭る

 カモノカミ アヒラツヤマハ  かものかみ あひらつやまは    "カモの神"     アヒラツ山は
                                           (ミヤサキ山)

 ミヲヤカミ ノチニタマヨリ  みをやかみ のちたまより    "御祖神"      後にタマヨリ

 カミトナル カアヒニアワセ  かみとなる かあひあわせ    神となる      河合に合わせ
                                           (=賀茂)

 ミヲヤカミ メヲノカミトテ  みをやかみ めをのかみとて    "御祖神"      陰陽の神とて
                                           (夫婦)

 イチシルキカナ        いちしるきかな          著きかな
 7月上旬のことです。ヒコホホデミの天君から、カモタケズミの結婚(イセムスビ)話が持ち上がりました。君の12人おられる后の中から、誰なりと好きな后を授けるから願いでるようにとの詔です。

 カモタケズミは、「私からは申し上げるのは畏れ多いことでございますので、天君の思し召しに従わせていただきます」とお答えになりました。
 これを聞いたコトシロヌシの妻、ミホツ姫が申し上げるには「君の12后の中でも、私の孫であるスケ后のモトメ姫、ウチ后のイソヨリ姫、シイオリ姫、の3名のうちの一人がお似合いかと思います。特にイソヨリ姫は、美しくも賢く気立ての優しい姫で、我が家系の自慢の姫でございます。是非おすすめいたしたく存じます」
 早速、父神コモリの神に意向をお尋ねしてみますと、にっこりとエミス顔で頷かれました。君は、イソヨリ姫をカモタケズミに賜わり、結婚の儀が河合(カワイ)の館で盛大に執り行われて、お二方ともここにお住まいになりました。

 都(ミズホ)でのヒコホホデミと后のトヨタマ姫は、太陽と月のように仲睦まじく、そのお姿はお雛様のようにいつも冠をかぶられ(ヤモの冠)、政を執られておりました。
 平和で豊かな年月が流れ過ぎ、天寿の近いことを悟った天君は、天の嗣(あめのひつぎ)をお譲りになるために、皇太子のウガヤフキアワセズの御子に、オニフの春宮からミズホの宮に行幸を要請します。
 君と若宮は久方ぶりに父子ともに合見えて、睦まじい時を過ごされました。

その時、若宮は中央にお坐りになられていて、左に鏡の臣(とみ)のアメノコヤネ、右に剣の臣のコモリ(ミオヒコ)がはべっておられました。
 天君はその席でミハタの紀(ふみ)(神璽)を、自手(みて)ずから、皇太子(ヲミコ)に厳かに譲られました。正后(まさきさき)トヨタマ姫は、八たの鏡(やたのかがみ)を高くささげ持ち、左大臣のカスガにさずけました。又、大典侍(おおすけ)のモトメ姫は八重垣(やえがき)の剣をささげ持ち、右大臣のコモリに与えました。
 ウガヤフキアワセズの君と左右両大臣の三人は、三種の神器を慎みてお受けになりました。

 その後、天君と后は夫婦共々、大津のシノ宮で静かに余生を過ごしておりましたが、間もなく、この宮でご一緒に神上がられました。 時は、四十二鈴(すず)八百五十枝(え)、キウトの年のことでした。
その年の八月四日には、先君の四十八夜の喪も明けて後、遺言通りにご遺体は敦賀のイササワケ宮に祭られ、ケヒの神と称えられました。

 ケヒの神の名の由来は、ヒコホホデミが、兄の海幸彦から借りた釣針を失って、途方にくれて松原をさまよっていた時、親切なアカツチの老人(おじ)に出合い、翁のお弁当を分けてもらって、共に語らい苦しい胸の内を打ち明けることができ、翁の進言に従って遠く鹿児島宮に居られるハデズミの所に船出したことにより、重苦しい運命が急転直下に解決して、釣針を見つけることができたばかりか、ご生涯を共にするトヨタマ姫とも結ばれる幸運をもたらした、門出のケイ(べんとう)にちなんだ神名です。

 トヨタマ姫のご遺体は、ミズハの神を祭る貴船神社に納めました。
 その理由は、昔姫が身重の体をおしてカモ船で、君の居られる敦賀に向かう途中、沖合で嵐に見舞われ船が沈む憂き目に合いながらも、お腹に宿した君の子を守らんための一心から、貴船のミゾロの竜に祈り、そのご加護を得て気丈にも渚に泳ぎ着くことができ、君の待つ敦賀で、無事天御子(あめみこ)ウガヤの君をめでたく出産したことによります。又、故あって、恥ずかしい思いからミズハの宮に一時身を隠したこともあり、後にアイゾロの神と呼ばれ、田水を守り船を生む船魂とも呼ばれるようになった縁の深い貴船にお祭りすることになったのです。

 ウガヤの君の詔がありました。
 「タガは両神(ふたがみ)の最初の宮であるが、古くなり破れているので建て替えて、ニニキネの君のお住まいになられたミズホの宮を、タガに移そうと思う。イシベに引越させ、オオヤに再建させ、いつもニニキネの先宮と両神とを、おそばで拝礼できるようにしようと思う」

 準備万端整ったところで、君は都をミズホから多賀に移して、即位されました。
 即位の礼のお姿は、綾錦(あやにしき)の御衣裳(みはも)を着て、胸には玉飾りを着け八方のヤモ冠をかぶられて、沓を着用されて真に美しく華やかなものであられました。ニニキネの君の定められたハラの儀式に則り、式はおごそかに進められ、それはもう絢爛豪華でおごそかな式典でした。
 翌日、君は国民の前にお立ちになり、万民から万歳、万歳と歓喜の声をもって迎えられました。

 即位の儀が無事終わったことを、伊勢に坐す天照神に報告すると、早速天照神から詔が伝えられました。
 「私は昔、天成の道(あまなりのみち)をカグの紀(ふみ)によって学びました。先祖の御祖(みおや)の書き記した多くの紀(ふみ)を、今、カモヒト君に授けます。この御祖の築かれた教えを良く守って民を慈しみ豊かで平和な政治を行えば、国民も君を慕いこの国は末永く栄えるでしょう。御祖の心に従い良い政治を行うように「御祖天君(みおやあまきみ)」という名を捧げましょう」
とのお言葉が添えられていました。

 勅使(オシカ)が去って後、君は詔を出し、冬至る日には、悠紀(ゆき)・主基(すき)の宮で大嘗祭も厳かに執り行われ、天神地祗との神事を滞りなく終えて国の栄えんことを祈りました。
 この後に、両神はタダス殿(下鴨神社)で天下を治めておられ、民は平和で豊かな生活を送っていました。

 ある新年三日、アメノコヤネが年賀のお祝いの席で申し上げるには、
 「君は今、御祖の道を守って国民を良く治められております。唯一つ心配なのは、世嗣子(よつぎこ)に恵まれずにいることです」

 右大臣のコモリが進言するには、
 「コヤネの家には世嗣紀があると聞いております。コヤネの後継者のアマノオシクモに、世嗣社(よつぎやしろ)を建てさせ祈らせたらいかがでしょうか」と。
しかしオシクモの努力にもかかわらず、何の兆候も表われません。そこで、コヤネがフトマニを占うと「シノハラ」と出て、ヤセ姫を中宮に立てることにいたしました。

    (シの原は、神の伏見の玉串を淡みの恵みの都たつなり)

 年若く中宮に立たれたヤセ姫を、他の11人の后達も心からお祝い申しあげました。オシクモが、身を清めて世嗣社に一心に祈ったところ、遂に兆しが表われて十一か月目にめでたくお生まれになったのが、イツセの君です。悲しむべきは、ヤセ姫が宮にお帰りあそばされて間もなくお亡くなりになられたことです。
 そのため、母乳が無いので早速国中にお触れを出し良い乳母を探すことになりました。

 以前、ヒコホホデミの天君の詔によって結ばれた、カモタケズミとイソヨリ姫の間には、13年間も子供ができませんでした。 ある時、ご夫婦そろってワケツチの神に子供が授かるように一心にお祈りしていると、その夜夢の中で、白玉を天から授かり、一年後にお生まれになったのがタマヨリ姫でした。タマヨリ姫はご両親に大切に育てられ、世にも美しい玉のような姫に成長されました。姫が14才の時、無事成人されたのを見届けると、姫一人残したまま、ご両親は相共にみまかって、河合(かわい)の神となられました。

 一人残されたタマヨリ姫は、両親の四十八の喪祭(もまつり)を静かに済ませると、唯一人でワケツチ宮を再び詣でて、ユフを捧げて祈っていると、いつこからかウツロイの神が現われて姫に近ずくと疑い深げに、姫に問いかけました。
 「お姫様、たった一人で一生涯ワケツチ神にお仕えするおつもりですか」

 姫は、はっとして声の方を振り向くと、きっぱりと答えて、
 「シカラズ(ちがいます)」

 又、ウツロイが問うには、
 「ヨニチナムカヤ(世間なみに)結婚するおつもりか」

 姫は腹だたしげに答えて、
 「私を侮辱するおまえはいったい何者なのだ。私は神の子ですぞ。名をなのれ」
 と言えば、ウツロイは恐れをなしてゴロゴロと雷鳴を残して飛び去りました。

 又、ある晴れた一日のことです。
 河合の森をそっと出て、ワケイカズチの宮に詣でて一人静かに禊(みそぎ)をしていると、どこからともなく白羽矢(しらはのや)が飛んできて宮の軒端にささりました。そのことがあって間もなく姫の生理は止まり、ごく自然に男児が生まれ出て、気がついてみれば何の不思議もなく育てておられました。

 子供が丁度3才になった時のことです。
 その子は、白羽矢を指差して「父」と言った瞬間、矢は天空高く登り消え去りました。人々の間にこの話が囁かれ、その矢はきっとワケイカズチの神に違いないとの噂が国中に広がっていきました。
 怪しくも、お美しい姫御子(ひめみこ)の元に、諸国の国神からの結婚の申込が殺到しますが、姫は頷かずに、タカノの森に御子共々隠れ家(かくれが)を造り、世間から身を隠して住まわれ、そこにワケイカツチ神の小祠(ほこら)を造り、常に御陰(みかげ)を慕いてお祭りしておりました。
 この噂が、いよいよ君のお耳にも入り、真実を確かめよとの詔が伝えられました。

 ある村老(むらおさ)が申し上げるには、
 「日枝山(ひえやま)の西の麓に一人の美しいお姫が一児と隠れ住んでおられて、その姫の乳は大変滋養に富んで清く、隣村の痩せ衰えた子供を哀れんで、姫が乳を与えたところ、たちまち肥え太って、今では元気に育っております。この姫は昔からの尊い神の子孫の出生ですが、故あって、深い森の中の隠れ家に子供とひっそり住んでおられます。この森の上には、いつも五色の雲が立ち登り、出雲路森(いずもじもり)と人々は親しみを持って呼んでおります。今まで大勢の神々がお迎えに上がりましたが、誰にも応じません。君にあられましては、是非正式な勅使を立てて丁重にお迎えに上がられるのがよろしいかと存じます」と申し上げました。

 君は早速イワクラを勅使として派遣しますが、結局姫の承諾を得られなかったとの復命がありました。それを聞いたワカヤマクイが申し上げるには、
 「君の特命を受けた勅使を出しても、来ないのは訳があってのことでございます。実は姫は一人でワケイカズチの神を日夜お祭りしている関係で、君のところに伺うと、お祭ができなくなるからです。君が姫を助けて一緒にワケイカズチ神をお祭りされればよろしいかと存じます」
と進言しました。
 
 君は早速ワカヤマクイに詔りをして、新たに勅使として任命し、姫と子を誠意を持ってお招きすると、今度は素直に上京して君に見えました。君が親しく姓名(うじな)をお尋ねになると、姫はりんとした声でお答えになり、
 「私の父はタケズミで、母の名はイソヨリと申し、両親が私の名前をタマヨリと名付けました。ハデズミの孫でございます。私のこの子には、父はございません。神に授けられた子です。父がなければ、イミナもできず、人は皆イツモの御子と呼んでおります」
 言葉は上品で、知性がにじみ出て声は透き通って美しく、そのお姿は玉の様に光輝いておられました。

 君は詔りされ、姫を内局(うちつぼね)として迎え、イツセ御子を養育されることになり、イツモの御子には、ミケイリ御子と名を賜わりました。その後、局の時に産んだ御子の名はイナイイ君ともうします。
 中宮になられてからお生まれになった御子の名こそ、カンヤマト・イワワレヒコの御子となられ、その時アメタネコがタケヒト君と実名(いみな)を捧げました。
 タケヒト誕生をたいそう喜ばれた天君も、御子のためにツズ歌を作って贈られました。

  これ璽(おしで) 豊経る(とよへる)幡(はた)の つず根にぞなせ













(私論.私見)