ホツマツタヱ1、アのヒマキ(天の巻)8



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【ホツマツタヱ1、アのヒマキ(天の巻)8、魂返しハタレ撃つ文】
 アマテル神とムハタレ(六魔王)の戦い
たまかえし はたれうつあや      魂返し ハタレ討つ文
ををんかみ あめかしたてる くしひるに     大御神 天が下照る 貴日霊(くしひる)に 
たみもゆたかに ふそみよろ   民も豊かに 二十三万
ふちみもやその ふたとしお へてもやすらや       二千三百八十の 二年を 経ても安らや
みかたちも なおわかやきて をわします     御形(みかたち)も なお若やぎて 御座(おわ)します
ことしふそよの さくすすお              今年二十四の さく鈴を 
ふそゐのすすに うゑかえて       ふそゐのすすに 植え替えて   
ふしにあたれは ねのくにと    (陽陰の)節に当れば 根の国と
さほこのくにの ますひとか     サホコの国の マスヒトが
うちのしらひと こくみらか     内のシラヒト コクミ等が   
をやもおかして こもおかす    親も犯して 子も犯す
とかあやまちも ふためとの    咎(とが)過ちも 二侍(ふため)殿  
かしこところの ひきつりに    賢所の 引き連りに
ゆるせはかかゑ くにおたす      許せば抱え 国を治(た)す
まいないつかみ まめならす      賂(まいない)掴み 忠(まる)ならず
つひにおろちに なめられて    遂にオロチに 舐められて
のりのくつるる ふしふしに     法(のり)の崩るる 節々に
はたれのものの うくめきて    ハタレのモノの 蠢めきて 
さはいのこゑの おそろしく     騒いの声の 恐ろしく
ここさわやまの はやききす              ここ多山の 早雉(ききす)
ひなくるつけの たかまには    杼(ひな)投(ぐ)る告げの タカマには
かみはかりして すすみてる     神議りして 進み出る
たけみかつちか そむたけの    タケミカツチが 十六丈の 
よろにすくるる ちからにも     万(よろ)に優るる 力にも
しらぬはたれの いふかさお   知らぬハタレの 訝さを 
うつやひたりの かなさきも     訴(う)つや秀(ひ)たりの カナサキも 
こたゑおしらて うかかゑは    応えを知らで 伺えば
あまてらします みことのり  天地(あま)照らします 御言宣(みことのり)
ややしるまこと はたれとは    やや知る真(まこと) ハタレとは
あめにもおらす かみならす    天にも居らず 神ならず
ひとのねちけの ときすくれ     人の拗けの 研ぎ優れ
こりゑてむつの はたれなる    凝(こ)り熟(え)て六つの ハタレ成る
にしきおろちの しむみちや    錦オロチの シムミチや
はるなははみち ゐそらみち    ハルナハハミチ ヰソラミチ
みたるきくみち ゐつなみち   乱るキクミチ ヰツナミチ
なるかみもとむ  あゑのみち   鳴神求む アヱノミチ 
みなそのしむお ぬきとりて    皆そのシムを 抜き取りて
わさにもゑつく おこりひの     穢業(わさ)に燃え点(つ)く 瘧(おこり)火の
ひひにみたひの なやみあり    日々に三度(みたび)の 悩みあり
いかておそれん かんちから     如何で恐れん 神力
はらいのそかは おのつから    祓い除(のぞ)かば 自ずから
ははもいそらも よりかゑし    ハハもイソラも 寄り返し
いるやもうけす かみのやは かならすあたる      射る矢も受けず 神の矢は 必ず当る
はたれみの わさやあらはす     ハタレ実の 術(わざ)や露わす
ふつぬしか てたておとえは     フツヌシが 手立(てだて)を問えば
かなさきの をきなこたゑて     カナサキの 翁答えて
われもなし ゐつくしおもて     「我も無し 慈しを以て
かんかたち なかこすなおに     神形 ナカコ素直に
かんちから よくものしるは かんとほり      神力 良く理知るば 神通り
ことなふたもつ くしひるそ    事和保つ 奇日霊(くしひる)ぞ 
たたやわらきお てたてなり    ただ和らぎを 手立なり」 
かみのみこころ うるはしく  神の御心 麗わしく
みそきつかさお かなさきに     禊司(みそぎつかさ)を カナサキに
ふつぬしそゑて みかつちも    フツヌシ副(そ)えて ミカツチも
いさおしあわせ うたしむる      功(いさおし)合わせ 打たしむる
あまのかこゆみ ははやそゑ    天の籠弓(かごゆみ) ハハ矢添え
はたれやふれと たまひけり    ハタレ破れと 賜ひけり
むつのはたれは やまたあり              六つのハタレは 八岐あり
ここちつかさに ななはかり    九千司に 七十万
むれあつまりて かきやふり    群れ集りて 垣(かき)破り
むらくもおこし ほのほふき   叢雲(むらくも)起こし 炎吹き
つふていかつち くにゆすり    礫(つぶて)雷(いかづち) 国搖すり
たみおゆすりて せめよする    民を揺すりて 攻め寄する
あまてるかみは さくなたり    アマテル神は サクナタリ 
はやかはのせに みそきして    速川の瀬に 禊して
はたれやふるの ましないの    ハタレ破るの 呪いの
たねおもとめて さつけます   種を求めて 授けます
もろかみうけて これおうつ      諸神受けて これを打つ
はたれしむみち なすわさに やまかわあふれ               ハタレシムミチ 為す術に 山川溢れ
うおろちか ほのほおはきて おとろかす     大オロチが 炎を吐きて 驚かす 
かなさきしはし たちかえり  カナサキ暫し 立ち帰り 
あめにつくれは ををんかみ    天に告ぐれば 大御神
たまふかたすす わらひなわ    賜ふ葛末(かたすす) 蕨縄(わらびなわ)
かなさきうけて せめくちの   カナサキ受けて 攻め口の
もろにさつけて ましなえは    諸に授けて 呪えば 
はたれのものの わさならす     ハタレのモノの 術成らず
にけんとすれと かみいくさ  逃げんとすれど 神軍
かちていけとる はたれまお    勝ちて生け捕る ハタレマを
かわくひてりに つなきおき     乾く日照りに つなぎ置き
ついにいけとる はたれかみ     遂に生け捕る ハタレ頭
つつかにおきて みちものま    ツツガに置きて 三千モノマ 
しむにあつけて もろかえりけり       シム(近親)に預けて 諸帰りけり
しかるのち またはやきしは おおはたれ  然る後 また早雉は 大ハタレ 
ねのたてやまに あらはれて     根の立山に 現れて 
あのにいたれは かみはかり    アノ(安濃)に至れば 神議り
ふつぬしやりて これおうつ     フツヌシ遣りて これを討つ
ときにはたれの いそらかみ    時にハタレの イソラ醸み
のやまおかゑて むらくもや   野山を枯えて 叢雲や
いくひかかやき おとろかし    活日輝やき 驚かし
とけやはなせは ふつぬしか  棘矢放せば フツヌシが
てにとるときに  ゆひやふれ   手に取る時に 指破れ
まつはせかえり あめにつく    先ず馳せ帰り 天に告ぐ
きみかんかゑて いそらみち   君考えて イソラミチ
をこしとふきと たまはれは    粔籹と蕗(ふき)と 賜われば
ふつぬしもろと ゆかけして     フツヌシ諸と 弓懸して
さらにむかいて やおもとむ    新に向かいて 矢を求む
はたれおもえり やにあたり     ハタレ思えり  「矢に当り
よみかえるかや いたまぬか    蘇えるかや 痛まぬか」
ふつぬしいわく ゆかけあり    フツヌシ曰く 「弓懸あり 
なんそいたまん うけよとて    何ぞ痛まん 受けよ」とて
ははやはなせは はたれとる    ハハ矢放せば ハタレ取る
ともにわらいて みやけあり  共に笑いて 「みやげあり
かみよりをこせ たまはれは     神より粔籹 賜れば」
はたれよろこひ かみいかん わかすきしるや       ハタレ喜び 「神如何ん 我が好き知るや」 
またいわく なんちもしるや     また曰く 「汝も知るや」
こたゑねは わらつていわく ころすなり    応えねば 笑って曰く 「殺すなり」
はたれいかつて なにゆえそ    ハタレ怒って 「何故ぞ」 
なんちほこりて はくるゆえ いそらうつなり      「汝ほこりて(熟成して) 化くる故 イソラ討つなり」
なおいかり いわおけあけて ののしれは     なお怒り 穢(いわお)蹴あげて 罵(のの)しれば
ふつぬしをこせ なけいるる  フツヌシ粔籹(をこせ) 投げ入るる 
はたれまうはひ あらそえり    ハタレマ奪ひ 争えり
みかたはふきお たきいふす  味方は蕗を 焚き燻す 
はたれむせんて しりそくお   ハタレ咽んで 退くを 
おひつめしはる ちはたれま    追い詰め縛る 千ハタレマ
これもひるねと なおいさみ  これも昼寝と なお勇み
よもよりかこみ いそらかみ    四方より囲み イソラ頭
ついにしはりて つつかなす    遂に縛りて ツツガなす 
ちものものまも そのくにの     千百のモノマも その国の 
しむにあつけて もろかえりけり              シムに預けて 諸帰りけり
またはたれ いよのやまより     またハタレ イヨの山より
きしゐくに わたりせむるお     キシヰ国 渡り迫むるを
とつみやの つけにもろあい     外つ宮の 告げに諸会い
かみはかり かねてかなての みことのり  神議り 兼ねて奏の(議り兼ねて 奏上したところ) 御言宣 
たけみかつちに ふとまかり    タケミカツチに ふと環(まか)り
たまえはいそき かなてんと    賜えば「急ぎ 奏でん」と
たかのにいたる ゐつなみち    高野に至る ヰツナミチ
よろのけものに はけかかる    万の獣に 化け懸かる
みかつちゆけは はたれかみ すすみていわく     ミカツチ行けばハタレ頭 進みて曰く
さきふたり われにかえせよ     「先二人  我に返せよ
かえさすは かみもとらんそ     返さずば  神も取らんぞ」
みかつちか わらいていわく     ミカツチが 笑ひて曰く
わかちから よろにすくれて     「我が力  万に優れて
いかつちも なんちもひしく なわうけよ   雷も 汝も拉(ひし)ぐ 縄受けよ」
はたれいかりて たたかえは    ハタレ怒りて 戦えば
みかたのなくる ふとまかり   味方の投ぐる ふと環り 
むれむさほりて はたれまお    群れ貧りて ハタレマを
うちおひつめて みなくくり  討ち追い詰めて 皆括り
ついにいつなも わらひなわ    遂にイツナも 蕨縄
ももひとつれに ゆひすへて    百一連に 結ひ統べて
ここちこももお つきしはり    九千九百を 継ぎ縛り
ひよとりくさの ことくなり     ヒヨトリ草の 如くなり
みつからやまに ひきのほる     自ら山に 引き登る
みなくひしまり まかるもの   皆首締り 罷る者
やまにうつみて いきのこる     山に埋みて 生き残る
ももささやまに つつかなす    百ササ山に ツツガなす
かなてからせる あやまちと    奏で枯らせる 誤ちと
もにつつしむお きこしめし    喪に謹むを 聞こし召し
みこのくすひに とわしむる    御子のクスヒに 問わしむる 
とみあやまちて よろものま  ひきからしけり   「臣誤ちて 万モノマ 引き枯らしけり」
またくすひ それはひとかや     またクスヒ 「それは人かや」
ことくなり かえことあれは     「如くなり」 返言あれば
ををんかみ つつやにいたり     大御神  ツツ屋に至り
みたまへは かたちはまさる かほはいぬ    見給えば 形は真猿 顔は犬 
そのもときけは むかしはは まさるにとつき      その本聞けば 「昔母  真猿に婚ぎ
よよおへて みなさることく     代々を経て 皆猿如く」
みことのり たまかえしせは ひとならん  御言宣 「魂返しせば 人成らん
さきにまかるも をおときて ひとにうまるそ  先に罷るも 緒を解きて 人に生まるぞ」
ときにもも ねかわくはかみ ひとになし    時に百  「願わくは神 人に為し
たまわれとみな まかれけり     給われ」と皆 罷れけり
ここすとのみち ををんかみ   ココストの道 大御神
つはものぬしと ふつぬしと     ツハモノヌシと フツヌシと
たけみかつちに たまかえし       タケミカツチに 魂返し
さるさるさわに おこるみちかな       猿去沢に 興る道かな
またはたれ つくしのみたり なかくにの またハタレ 筑紫の三人 中国の
はなやまののに ともあつむ     花山の野に 朋集む
ときにあまてる みことのり   時に天照る 御言宣 
うけもちのまこ かたまろに くにみてかえれ   ウケモチの孫  カダマロに 「国見て返れ」
かたまろか いたれははたれ いろかえて    カダマロが 至ればハタレ 色変えて
さきみたれたる きくみちの    咲き乱れたる キクミチの
ここさわゆくや ひめおとり むらくもたひや       ここ騒ゆくや 水埴躍り 叢雲灯火や
ほたるひの わらひあさけり いかりひの 蛍火の 笑い嘲けり 怒霊の
あおたまはけは すすみゑす   穢魂吐けば 進み得ず
かたまろかえり もふすとき    カダマロ帰り 申す時 
しはしかんかゑ みことのり       しばし考え 御言宣 
これきくならん きつねとは 「これ キ・ク ならん キツネとは
きはねよりなる つさおへて ねにきてすめる     木は根より生る 西南を経て 北に来て住める
ねすみおは あふらにあけて いとふへし     鼠をば 油に揚げて 厭ふべし 
くはちとたかふ くはきうの をのほおいとふ        クはちと違ふ クは煙の 陽の放を厭ふ
はしかみの をかめかふすへ ひしかんと     椒の 陽香・陰香燻べ 拉がん」と
みことおうけて かたまろか    御言を承けて カダマロが
もろにをしゑて のにいたる    諸に教えて 野に至る
はたれみたりか さきみたれ    ハタレ三人が 咲き乱れ 
いくゑかわりて おとろかす     幾回変わりて 驚かす
かたまろなける あけねすみ    カダマロ投げる 揚ネズミ
きくたみうはひ むさほるお    キ・ク民奪ひ 貪るを
もろかみつよく たたかえは    諸守強く 戦えば 
ゆつりにくるお おひつめて    譲り逃ぐるを 追い詰めて
ちたりとらゑて きらんとす    千人捕えて 斬らんとす
ふつくなけきて やつかれら    悉く嘆きて 「僕(やつかれ)ら
かえりもふてん あめたみと 返り詣でん 天民」と
いのちおこえは かたまろか みなときゆるし  命を乞えば カダマロが 皆解き許し
わらなわお さわになわせて はしかみと    藁縄を 多に綯せて  椒(はしかみ)と
めかおいふせは みたるるお    陰香を燻せば 乱るるを
さらにたたかひ おひつめて    更に戦ひ 追ひ詰めて 
ふつくとらゑて さきためし    悉く捕えて 先例 
つひにおひつめ みはたれお    遂に追ひ詰め 三ハタレを
しはるわらひに きくつねお     縛る蕨(縄)に キ・クツネを
みさとのあみお のにはりて     三里の網を 野に張りて
みなおひいれて たまつなき    皆追ひ入れて 玉つなぎ(数珠繋ぎ) 
きくつねすへて みそみよろ    キ・クツネ総て 三十三万
みたりはつつか もろかえりけり        三人はツツガ 諸帰りけり
      
またはたれ ひすみひたかみ     またハタレ 日隅・ヒタカミ
かくやま ふたいわうらに     橘山下 二岩浦に
つくつけの くしのひけは     継ぐ告げの 櫛の歯挽けば
もろかみは たかまにはかり みゆきとそ     諸守は タカマに議り
 ねかゑはかみの     御幸とぞ 願えば神の
みゆきなる てくるまのうち    御幸成る  出車の内
せおりつめ あめのみかけに     セオリツ姫 天の身陰に
あきつめは のみかけさす     アキツ姫は 日の放影射す
いふきぬし くまのくすひと まてにあり      イフキヌシ クマノクスヒと
しろくろこまに  左右にあり 白・黒駒に
もろそひて やまたにいたり 諸添ひて  ヤマタに至り
きしとへは はるなははみち    雉飛べば ハルナハハミチ
もやまも かゑてむらくも     野も山も 枯えて叢雲
ほのほふき とけやのあられ     炎吹き  棘矢の霰
なるかみに みかたかえれは     鳴神に 味方帰れば
ををんかみ かねてさつさに     大御神  予てサツサに
うたみつけ なくれはたしむ    歌見つけ 投ぐれば嗜む
はたれまお さつさつつうた   ハタレマを サツサツヅ歌
さすらても はたれもはなけ    『さすらても  ハタレも放来
みつたら かかんなすかも     満つ足らず  カカン為すがも
てたてつき かれのんてんも     手立尽き  故ノンテンも
あにきか ひつきとわれは     あに効かず 日月と我は
あわもてらすさ           天地も照らすさ』
もろうたふ はたれいかりて     諸歌ふ  ハタレ怒りて
 のあられ かみのたみめに     矢の霰 神のタミメに
やもたた いやたけいかり     矢も立たず 弥猛怒り
ほはなふく かみみつはめお     火花 吹く  神ミツハメを
まねくとき ほのほきゆれは     招く時  炎消ゆれば
むなさわき にけんとするお     胸騒ぎ 逃げんとするを
たちからを はたれはるなに     タチカラヲ ハタレ治主に
とひかかり ちからあらそひ     飛びかかり 力争ひ
おししはる はたれまもみな     押し縛る ハタレマも皆
とりしはり まえひきすゑ     捕り縛り 前に引き据え
たれあくる きみやさかにの     垂上ぐる  君ヤサカニの
まかるたま せおりはまふつ     環珠  セオリはマフツ
 やたかかみ あきつくさなき     ヤタ鏡 アキツ草薙
やゑつるき             八重剣
ときにいふきと               時にイフキト
ゆえおとふ はるなこたえて     故を問ふ  治主答えて
やつかれに のますひとか     「僕に 根のマスヒトが
をしえけり いさおしならは     教えけり  "功 成らば
くにつかみ これそさのをの     国つ神 これソサノヲの
みことなり ときにいふきと     御言なり"」 時にイフキト
まふつなら かんかみんとて     「真直なら 鑑みん」とて
みかかみに うつせはふつく     御鏡に 写せば直く
つはさあり いふきといわく     翼あり イフキト曰く
このはたれ ぬゑあしもちそ     「このハタレ ヌヱアシモチぞ
はけわさに たふらかすもの     化け術に 誑らかすモノ
みなきらん             皆斬らん」
ときにくすひか               時にクスヒが
くまのかみ まねけはからす     隈の神 招けば烏
やつきたる ここにはたれの     八つ来たる  ここにハタレの
しほり ちかひととめて     霊を絞り 誓ひ留めて(誓約書を書かせて)
うしほあひ かけうつすとき     潮浴び  影写す時
むますたり ひとなるはみな     六十万人 人成るは皆
たみとなる さきのつつかの     民となる 先のツツガの
はたれも はるなかものま     六ハタレも  ハルナがモノマ
ゐちたりと くにあつけよち     五千人と 国預け四千
みなめして おそそくとき     皆召して 霊を濯ぐ時
きくたり すくにきつねの     キク三人  直に狐の
かけあれは みつきつね     影 あれば 名も三狐
みそみよろ たまたちんお     三十三万 魂断ちせんを
かたかこふ もろゆるさは     カダが乞ふ 諸許さねば
かたのかみ ななたひちかふ     カダの守 七度誓ふ
のりこちに ややゆるさるる     宣言に やや許さるる
みことのり みつひこかこと     御言宣 「三彦が如 (三彦 並びに)
もろきつね うけのみたまお     諸狐 ウケノミタマを
まもらよ もしもたかはは     守らせよ もしも違はば
すみやかに たまたちなせよ     速かに 魂断ち為せよ
このゆえに なかくなんちに     この故に 永く汝に
つけるなり あまつみことの     仕るなり」 天つ御言の
おもむきお つけてあにひこ     趣きを 告げて兄彦
ここにとめ なかはやましろ     ここに留め 中は山背
はなやま おとはひかしの     花山野 弟は東の
あすかへ きつねもみつに     アスカ野へ 狐も三つに
わけゆきて たはたのとりお     分け行きて 田畑の鳥を
おわしむる うけのみたまと     追わしむる ウケノミタマと
うけもちも かたのかみなり     ウケモチも カタの上なり
しむみちも ゐそらゐつなも     シムミチも ヰソラヰツナも
おぬきて おしてにちかひ     霊を抜きて オシテに誓ひ
しほあひて うつすかかみに     潮 浴びて 写す鏡に
なおさると おろちとみつち     なお猿と オロチとミツチ
かけあれは そそひてはけ     影あれば 濯いで掃けぬ
ももみそは すてころすお     百三十は 既に殺すを
みことのり きらはみのほに     御言宣 「斬らば 三の火に
なやまんそ ひとなるまては     悩まんぞ 人成る迄は
たすけおき ひとさかしれは     助け置き 人清汚知れば
かみのたね みねにあつけて     神の種」 峰に預けて
そのをして はたれまこちと     そのヲシテ ハタレマ九千と
たみこよろ うつむたかのの     民 九万 埋む 高野の
たまかわそこれ           タマカワぞこれ
ちわやより あめゑのみちか     チワヤより アメヱノミチが
をんかみに ことかたらんと     御神に 「事語らん」と
よはらしむ きみいふきとに     呼ばらしむ 君イフキトに
しつめしむ いふきとぬしは     執めしむ イフキトヌシは
みゆきこし はたれかとわく     御幸輿 ハタレが問わく
かんかみか こたえてかみの     「上守か」 答えて 「神の
やつこなり またとふやつこ     奴なり」 また問ふ 「奴
こしはなに いわくなんちお     輿は何」 曰く 「汝を
やことせん ゆえにのるなり     奴とせん 故に乗るなり」
またはたれ なんちわかはゑ     またハタレ 「汝若生え
はちみする やつことせんと     恥見する 奴とせん」と
なりめくる はたたかみなり     鳴り捲る ハタタ神なり
いふきとは うつろゐまねき     イフキトは ウツロヰ招き
これおけす むらくもおおひ     これを消す 叢雲覆ひ
くらませは しなとおまねき     暗ませば シナトを招き
ふきはらふ ほのほおはきて     吹き払ふ 炎を吐きて
むろやけは たつためまねき     室 焼けば  タツタ姫招き
これおけす はたれむせんて     これを消す ハタレむせんで
このはして つふてあられに     適わして 礫霰に
たみせめる みかたひれて     飛み攻める 味方領巾着て
かくいれて うちこほさは     橘入れて  棄ちこぼさせば
はたれまの うはひはむに     ハタレマの 奪ひ食む間に
とりしはる はたれもひれ     捕り縛る ハタレも領巾し
まはすはゐ ておとろけは     回す貝  見て驚けば
かんかゑて ほらかゐふか     考えて ホラ貝 吹かせ
ひれけし かくむさほら     マ領巾消し  橘貪らせ
これおうつ はたれつちもて     これを討つ ハタレ槌 以て
かみおうつ かみはにきてに     神を打つ 神は和手に
うつつちの やれてとへらの     打つ槌の 破れて海桐花の
うちわや ここにはたれか     葉団扇 (天狗の羽団扇)や ここにハタレが
むなさわき にくるおつかむ     胸騒ぎ 逃ぐるを掴む
たちからを ついにわらひの     タチカラヲ 遂に蕨の
なわしはり なんちやつこと     縄縛り 「汝奴と
なすへきや なるやといえと     なすべきや なるや」と言えど
ものいわ きらんとすれは     物言わず  斬らんとすれば
いふきぬし ととめてこれも     イフキヌシ 留めて これも
ちかいなす ひますのものま     誓いなす 十万のモノマ
あゐぬかけ ほのほものかれ     天狗影 炎も逃れ
ちわやふる かみのめくみと     「ちわやふる  神の恵み」と
ちちをかむ             散々拝む
すへてななます               総て七十万
ここちみな ひとなるのりの     九千皆 人成る法の
みかかみお せおりつひめの     御鏡を セオリツ姫の
もちいてて のちのはたれの     持ち出でて 後のハタレの
ひととなる まふつのかかみ    ' 人と成る マフツの鏡'
みるために ふたみのいわと     見るために フタミの岩と
なつけます よよあらしほの     名付けます 代々荒潮の
やもあひに ひたせとさひ     八百会に 浸せど錆ぬ
かんかかみ いまなからえ     神鏡 今永らえり
たかのには はけものいてて     タカノには 化け物出でて
いふきぬし みやおたつれは     イフキヌシ 宮を建つれば
しつまるに をしてたまわる     鎮まるに ヲシテ賜わる
たかのかみ またかなさきは     タカノ守 またカナサキは
すみよろし かみのをしてと     スミヨロシ 守のヲシテと
みはのそを たまふつくしの     御衣の裾端 賜ふ 「ツクシの
たみすへて ゆひをさむへし     民統べて 結ひ治むべし
わかかわり またふつぬしは     我が代り」 またフツヌシは
かくやまお つかさとれとて     「カグ山を 司れ」とて
かとりかみ たけみかつちは     カトリ守 タケミカツチは
なるかみに たけものぬしの     鳴神に タケモノヌシの
かふつちと さきのくにゑに     枯槌と 先の国絵に
ゆりしつむ かないしつちも     搖り 鎮む  要石槌も
たまふなり つはものぬしか     賜ふなり ツハモノヌシが
たまかえし きよきまことの     魂返し 清き真の
はなふりて みちにあもなし     放ふりて 道に天地 成し
しきあかた あなしうをかみ     シキ県 天成治守
をしてそえ すゑてうつしひ     ヲシテ添え 据えて写し日
かんをちそ ゐちちかゑらむ     代治人ぞ ヰチチが得らむ
たまかえし ここすとのねお     魂返し ココストの根を
むすふふみ こことむすひの     結ぶ文 ココトムスビの
にすゑて かすかとのとそ     名に据えて カスガ殿とぞ
たふとませ きみかなさきに     尊ませ  君カナサキに
のたまふは よろものきれと     宣給ふは 「万者転れど
たまかえし みたれをとけは     魂返し  乱れ緒解けば
かみとなる ここちかすかと     神となる 心地明清」と
さとのも をきなかもりも     里の名も 翁が守も
たまわれは かとりかいもと     賜われば カトリが妹
あさかひめ こことむすひの     アサカ姫 ココトムスビの
つまとして うむかすかまろ     妻として 生むカスガマロ
わかひこそこれ           ワカヒコぞこれ


 アマテル神のご威光は天下あまねく照り輝き、民の暮らしも豊かに世は事も無く移ろいました。すでに長い年月を経てもなお君の御心はいつも安らかにあらせ、御容姿はなお一層健やかに若やいで御座(おわ)しました。

 今年は丁度、天神四代目のウビチニの御代から植え継いできた天真榊(アメノマサカキ)の二十四本目が枯れ、二十五本目を植え替え折鈴(サクスズ)となる天(アメ)の節目に当たっていました。この節を窺うかの様にネ(北陸)の国の益人(マスヒト・代官)シラヒト(白人)とサホコ(山陰)の国の益人コクミ(胡久美)等が、それぞれ国を預かる公の立場を忘れ、恩義ある先代の益人クラキネの妻とその娘のクラコ姫を同時に犯す事件をおこしました。

 この犯罪により両人は厳しい判決を受け死刑を宣告されたものの、結局アマテル神の后のモチコと妹ハヤコのひいきにより流刑に減刑され、新益人となったカンサヒに再度仕官して副益人(ソエマスヒト)の地位を得て国を治めていました。元々素養の無い両人は、相変わらず席が温まると、賄賂を取るわ税(チカラ)をくすねるわの不忠者で政治も乱れ民は嘆き苦しんでいました。

 ついに大蛇(おろち)に舐(な)められて、法(のり)の崩れる節々にハタレ(悪魔)が群がりうごめいて、不気味な五月蝿(サハイ)の唸(うな)りの様な騒動が国中に巻き起り、その恐ろしい音は日に日に近づいていました。 このハタレ共の蜂起を伝える急使がココサワ山(菊沢山)から次々と宮中に飛来して、それはもう横糸を通す梭(ひ)を投げる回数でやって来ました。

 高天(たかま・宮中)では緊急に神々が集まり神議が沸騰していました。タケミカズチ(建御雷)は、一丈六尺の自慢の背丈にも万人に勝れた剛力にもかかわらず、今回のハタレについては一向に正体が解らぬ訝(いぶか)しさを顔に表わして、恥も外聞もなく進み出ると諸神に教えを乞いました。又、アマテル神の左に座すカナサキも、「打倒ハタレ」の急先鋒でしたが、実は得体の知れないハタレがとんと解らず、皆一同君にお伺いを立てました。

 この時、天下をあまねく照らして民の心を明るく導くアマテル神が詔のりしました。「私とて少し真実を知っているだけです。ハタレなる者は天上の神の世界にも居ないので神ではありません。たぶん根生の拗(ねじ)けた小利口な人が群れ集まって、法(のり)の乱れに乗じて御旗(みはた)を破り、ご政道を危うくして国を奪おうと計る悪賢い六族(ムツ)のハタレ魔です。そのハタレ頭(カミ・魔王)の名は、錦大蛇(ニシキオロチ)のシムミチとハルナハハミチ、次イソラミチに乱れ咲くキクミチとイツナミチ、そして雷神(ナルカミ)を呼ぶアエノミチの六族です。このハタレ共とて弱点はあります。自らの血を抜き、妖術を操り人をたぶらかす反面、その術に驕(おご)り高ぶり燃え尽きて、ついには日々に三度の熱に苦しみ悩むのです。何ぞ恐れんこのハタレ、神の力により祓(はら)い除かば、ハハ(蛇)もイソラ(蛟・みずち)も押し返して退散させるのだ。敵の射る矢は当たらず、神の矢は必ず当たる。化けの皮を現わしたハタレは妖術も利かず、一網打尽に打ち取るが良い」。

 次にフツヌシ(香取神宮祭神)がハタレ魔を成敗する手段(テダテ)を問い尋ねました。この度は君に替わって、カナサキ(住吉)の翁が答えました。「我にも無いのじゃ。考えるに唯々、慈愛(いつくし)を持って当たれば、神形(カンカタチ・神威)が保たれ、心中(ナカゴ)が常に素直なら神力(カンチカラ)が備わり、良く敵状を知れば神通力(カントオリ)が得られ無事を保てる。これも皆君の奇霊(クシヒル)の賜物なり。唯々懐柔を戦術とすべきです」。

 これを聞いていたアマテル神の御心は晴れ晴れと美(うるわし)く、カナサキに禊司(みそぎつかさ)の大役を授けると、フツヌシとタケミカズチを副えて、功(いさおし)を合わせて討伐することになりました。君は天(アメ)の鹿児弓(カゴユミ)と羽羽矢(ハハヤ・破魔矢)を添えて御手ずから「ハタレ破れ」と三人に賜いました。

 この六族のハタレ共はそれぞれ八岐族(ヤマタ)を従えて、その下に九千人の司達が助けて都合七十万人の魔民(モノマ)を従え、徒党を組んで諸国の柵を破り、神の宮居を襲っては農民の食糧を奪っていきました。その侵略のすさまじい事、常に叢雲(むらくも)を起こし暗闇にし、突然炎(ほのほ)を吹き上げ驚かし、飛礫(つぶて)あられを降らし、雷を落として度肝を抜き地震で民を揺すって室屋(ムロヤ・立穴住居)を壊し攻め寄せて来ます。

 この敵状をじっと聞いておられたアマテル神は評定の終わるのを待って静かに宮を抜け出ると、瀧の落ち降る速川(はやかわ)の瀬で禊(みそぎ)をされて心を鎮め給い、ハタレを打ち破る呪(まじない)の種(戦術)を深く求めてついに感得し諸神達(モロカンタチ)にこの種を授けました。諸将はこの賜物を武器として、無事六(ム)ハタレを打ち負かすことができました。

 カナサキとハタレシムミチの戦い(1)
 正体が錦大蛇(ニシキオロチ)のシムミチの仕掛ける妖術は、常に気付いた時は既にして山川が洪水となり溢(あふ)れていました。押し寄せる濁流の闇に潜む大蛇(オロチ)が、神軍(スメミイクサ)に炎を吐きかけて皆を驚かせ行く手を阻みました。この状況を見たカナサキは、一旦退却し本宮に帰り先ずは君に戦況報告をしました。これに答えて大御神(オオンカミ)は呪いの種の葛煤(カダスス)と蕨縄(ワラビナワ)を御手ずから授けました。カナサキはこの呪(まじな)いの武器を拝受し戦場に立ち戻り、諸神にこれを別け与えて呪えばたちまちハタレ魔の術が利かなくなり、逃げようとするところを神軍(カミイクサ)は勇ましく戦って全て生け捕りました。捕えたハタレ共は日照で乾いた大地に繋いで置き、最後まで抵抗するハタレ頭(カミ・魔王)もついに取り抑えて蕨縄(ワラビナワ)でくくり、牢屋(ツツガ)に入れて置きました。この戦いの戦果捕虜三千の魔民(モノマ)達は皆血縁の国神に預けて諸神は堂々の凱旋をしました。

 フツヌシとイソラミチの戦い(2)
 その後の事です。再び早キジ(急使)が飛び来たり、その注進文によると、ネ(北陸)の立山(タテヤマ)に起こった大ハタレの軍団が勢力を増しながら、ついに伊勢(イセ)近くの安濃(アノ)に至った事が伝えられました。宮中では再び神議(カミバカリ)が開かれて、今度はフツヌシを派遣して敵を征討(せいとう)することに決まりました。フツヌシ率いる神軍(カミイクサ)がアノに向うと、イソラ頭(カミ)は野山の景色を一変させて諸神を面食らわせ、叢雲(むらくも)を巻き起こしたかと思う間もなく太陽を幾重にも輝かせて驚かしました。イソラ頭(カミ)が先ず先に刺矢(とげや・石鏃矢)を放ち、フツヌシがこの矢を素早く手で受け取った時に指を怪我して、ここは先ず馳せ帰って天(アメ)に告げると君は戦況をしばし考えて、今度はイソラミチにオコゼとフキ(蕗)を賜わりました。フツヌシは二度と指を負傷しないように諸神と一緒に弓懸(ゆがけ・弓術用皮手袋)を用意して再び戦場に向い、もう一度矢を射るようにイソラ頭(カミ)に大声で求めました。
 フツヌシの声を聞いたイソラ頭(カミ)は、死んだはずの神が現われたのを不思議に思い、
 「矢に当たり蘇(よみがえ)るかや、痛まぬか」と、大声で呼ばわりました。フツヌシいわく、
 「弓懸(ゆがけ)あり。何ぞ痛まん、受けよ」と言いつつ羽羽矢(ハハヤ)を射返せば、ハタレは矢を受け取り共に誇らかに笑い合いました。
 「土産あり」と神よりオコゼを賜わり、ハタレは大喜びして
 「神如何、我が好物(スキ)を知るや」続けていわく、
 「汝も知るや」フツヌシはこれには答えず笑っていわく、
 「殺すなり」ハタレはこれを聞き怒り出し、
 「何故ぞ」
 「汝は得意気に人を化かす故、イソラを打ち殺すのだ」イソラは益々怒り、岩を蹴上げて罵(ののし)り戦いを挑んできました。フツヌシはここぞという時を待ってオコゼを敵陣に投げ入れました。ハタレ魔達が競って奪い合いを初めた頃合を見て、味方が今度は蕗(フキ)を焚き燻(いぶ)すと、ハタレが咽(むせ)んで逃げ出すのを追い詰めて千のハタレを捕えました。友軍は皆、
 「これも昼寝さ」と、益々勇み、四方より敵を包囲してイソラ頭(カミ)をついに縛り上げ牢屋に入れました。諸神は、千百人の魔民(モノマ)をその国の国神に預けて意気掲掲と凱旋しました。

 タケミカズチとイツナミチの戦い(3)
 又、ハタレが現われました。今度はイヨ(伊与)の山に起こり、海を渡って紀州(キシイ)国に上陸し攻め上がって来ました。この一事は遠宮(トツミヤ)の月読宮からの急報で知らされました。諸神は再び会って急遽(きゆうきょ)神議(カミバカリ)を開き、今度は予(かね)てから武勇の誉れ高いタケミカズチを鎮撫に向けることに決しました。
 アマテル神の詔のりがあり、タケミカズチには大曲餅(フトマガリ)を神から賜いました。ミカズチは急ぎ鎮圧に出発し高野(タカノ)に至ると、イツナミチは色々な動物の姿に化け掛かって来ました。化け物を打ち払いつつ更に進軍すると、ついにハタレ頭(カミ)が出現し、進み出ていわく、
 「先の二人の捕虜を我に返せ。返さねば、神といえども容赦なく捕えるぞ」
 ミカズチはこれを聞いて思わず笑っていわく、
 「我が力が万人に勝れるを知らぬか。雷電(イカヅチ)だろうが汝だろうが押し殺すぞ。さあ、縄を受けよ」これを聞いたハタレは怒って戦いを挑んで来ました。頃合を見計って友軍が大曲餅(フトマガリ)を敵方に投げ入れると、ハタレ魔は戦(いくさ)を忘れて我勝ちに群れ貪(むさぼ)り初めました。このハタレ魔を打ちつつ追い詰めて皆を括(くく)り上げてついにはイツナ頭(カミ)も捕え、蕨縄(ワラビナワ)で縛り上げ、百人を一連に結び合わせて、終いには九千百人の捕虜を継ぎ足し一団としたので、それは丁度ヒヨドリ草の様に見えました。タケミカズチは捕虜全員を自ら高野山に引き登り力余り強引過ぎて多くの者の首が締まって死者が続出しました。すでに罷(まか)る者は山に埋めて塚となし、生き残りの百人は笹山(ササヤマ)に牢屋(ツツガ)を造り投獄しました。
 鎮撫の目的が、結果的に大量の死者を出したのは過ちであったと、深く反省したタケミカズチは、死者の霊に喪に服し慎んでいました。
 アマテル神はこの一件を聞こし召し、皇子(みこ)のクスヒ(熊野樟日)に問わしめました。ミカズチは答えて、
 「臣(トミ・私)は過って大勢の魔民(モノマ)を、山に引きずり上げて殺してしまいました。深くお詫びいたします」クスヒいわく、
 「それは人かや」
 「如くでございます」
 クスヒの復命を受けたアマテル神は、自ら人の如き者の正体を確かめようと笹山の牢屋に御幸されて観察すると、何とその姿は真猿(マサル)そっくりで顔は犬の様でした。同情した君が先祖を聞いてみると、
 「昔僕(やつかれら)等は、先祖の母が猿と結婚して出来た子孫が次々と増え、皆猿の如くなってしまいました」
 どの目も不安そうに瞬(しばたた)き、助けを乞うていました。
 君は詔のりされました。
 「汝等、皆、魂返(たまがえ)しをせば、人間(ひと)に帰らん。先に山で死んだ者も魂の緒(たまのお)を解けば人に生まれ変わるぞ」
 それを聞いた百人は皆一同に、
 「願わくば、神様、僕供(やつかれども)を人間に生まれ変わらせ賜われ」と、皆死んでいきました。

 この魂返しの術は、別名ココスト(心清瓊)の道とも言い、この時大御神(オオンカミ)は特に三人を指名してツワモノヌシとフツヌシとタケミカズチに「死者の霊を猿から解放せよ」と魂返しさせました。
 この様に、猿の動物霊を魂返しの術で取り去ったこの沢に因んで、この地の名を猿去沢(サルサルサワ)と呼ぶ起源がここにあります。

 カダマロとキクミチの戦い(4)
 今度はツクシ(月隅国・九州)から三兄弟のハタレが上陸してきました。
 「ただ今ナカクニ(葦原中国)の花山の野(ハナヤマ・京都山科、伏見区付近)に仲間を集めて結集中です」
 早キジ(急使)は息もつかせぬ早さで緊急を告げました。この時、アマテル神の詔りがウケモチ(保食・稲荷神)の孫のカダマロ(荷田麿)にありました。
 「領国(クニ)見て帰れ」 (自国の様子を見てまいれ)
 カダマロは早速、神軍(カミイクサ)を率いて花山野に到着すると、ハタレはたちまち辺りの景色を一変させ驚かせ、そこここに色とりどりの菊の花が一気に咲き乱れました。この菊沢(ココサワ)を掻き分けてさらに進軍すると一面色彩(いろどり)鮮やかな花園を舞台にどこからともなく聞こえる妙(たえ)なる楽(がく)の音に誘われ華やかな姫踊りが始まりました。諸神達(モロカンタチ)がうっとり見とれ釘付けになって動けなくなったその時に、突然叢雲(むらくも)が立ち昇り四囲(しい)は暗闇にすっぽり包まれて不気味な静けさ、いつの間にかそこここに松明(たいまつ)が灯り、ゆらゆらと風も無いのに揺れ初めました。頭上からは星が降るように青白い蛍火が降りそそぎ、目も開けられない有様でついに蛍の大群に阻まれてしまいました。
 このにっちもさっちもいかない様子を笑うかの様に嘲(あざけ)りの大声が響き渡ったかと思えば、怒りの青珠(アオタマ)がそこかしこから吐き出して行く手を塞ぎ進退極まりました。

 カダマロは戦陣を一人そっと抜け出し天(アメ)にこの戦況を申し上げると、君はしばし考えてから詔のりされました。
 「これは人を化かすキクに違いない。キツネ(狐)と何故言うかは、木(キ・東)は根(ネ・北)から成り立つ様に、暦(こよみ・六十進法、ホツマ歴)の上でも、東(キ・木)は北(ネ・根)から始まり、西(ツ)そして南(サ)を経て又北(ネ・根)に戻るのでキツネと言う。同じ様に、根(ネ)に来て住むネスミ(根住・鼠)を油に揚げてご馳走してやるが良い。又、ク(ツネ・貉・むじな)はキツネとちょっと違い、クツネは狐火(きつねび)の尾の陰火(ホ)を大嫌いの様だ。さあ行ってこの恥頭(ハジカミ)共の、生姜(オガ・しょうが)と茗荷(メガ・みょうが)と熏(フスベ・蕗・ふき)の三兄弟を打ち取るべし」

 詔のりを受けたカダマロが、この戦術を諸神に授け再び花山野に行くや、またもハタレの三兄弟はキクを咲き乱れさせ、何回も色を変えて驚かしました。
 カダマロはこの時とばかり、アマテル神から授かった揚げ鼠(あげねずみ)を四方に投げ散らすと、キク民の化けの皮が剥げ揚げ鼠を奪い合い貪り喰う所を、諸神は勇敢に戦いを挑みました。不意をつかれたキク共が我先に逃げ出すのを、皆追い詰めて千人を捕虜にして打首(斬首)にしようとした所、皆心から嘆き悲しんで命乞いをしました。
 「僕等(やつかれら)を天民(アメタミ)に帰順させて下さい。どうか、天照神にお願い申し上げます」
 これを聞いたカダマロは哀れに思い全員の縄を解いて許す代わりに皆に大量の藁縄(わらなわ)をなわせて大網を作らせ、風下のハタレ軍に向かってハジカミ(山椒)とメガ(茗荷)を大量に燻(いぶ)すとすぐにキクの妖術が乱れて利かなくなり更に戦い追い詰めて徹底的に捕えました。ここで前回同様に三ハタレの頭(カミ)を更に追い詰めて蕨縄で縛り上げました。残るキクツネを捕えようと、先に用意した三里(みさと)に渡る大網を野に張り皆追い入れて捕え玉繋ぎにしました。
 キクツネの捕虜は総勢三十三万人に及び、キツネ三兄弟を牢屋(ツツガ)に入れ置いて諸神(モロ)は堂々の凱旋をしました。

 アマテル神とイブキド・クマノクスヒ・タジカラオ、対ハルナハハミチとの戦い(5)
 又、ハタレが蜂起しました。今度はヒスミ(日隅、青森)とヒタカミ(日高見、陸奥)、カグヤマト(香具山本、東海・関東)です。
 二岩(見)浦(フタイワウラ)に、次々と早船が着き敵状を伝えてきます。
 諸神達は櫛の歯を引いて(櫛占)高天(タカマ・宮中)で評議した結果、アマテル神に御幸を乞うことにしました。この旨をアマテル神に願い出ると即座に御幸が決まりました。
 八英輦(ヤフサテグルマ)の中には、中宮セオリツ姫が天照神の御陰に寄り添っておられました。后のアキツ姫(速開津姫)は翳(さしは)を指して日の御陰に揺られていました。イフキヌシ(伊吹戸主)は白駒にまたがり、クマノクスヒ(熊野樟日)は黒駒に乗って輦(てくるま)の両脇を固めていました。諸神達は前後に添って君の警護に当たり、やがて山田郡(ヤマダアガタ・群馬県山田郡か)に至りました。
 敵状を見させようと、キジ(密偵)を放した所、ハルナハハミチは野も山も状況を一変させて惑わせ、叢雲(むらくも)を起こして炎を吹き上げ、刺矢(とげや)のあられを降らせて、次は雷神(ナルカミ)を招いて雷鳴を轟かせ行く手を阻みました。ここで友軍は一旦アマテル神の座す輦(テクルマ)に戻りました。
 アマテル神は、事前に用意しておいたサッサ(粽・ちまき)にウタミ(短冊)を付けてツヅ歌(連歌)を記し、敵に投げ与えました。ハタレ魔が喰い嗜(たしな)んでるのを見て諸神が歌いはやしました。
浮浪者(サスラ)でも  ハタレも鼻息(ハナゲ)  三つ不足(たらず)
カカン(篝火)なすかも  手段(テダテ)尽き  故祝詞(カレノン)・楽(デン)も
天(ア)に聞かず  日月(ヒツキ)と我は  天地(アワ)も照らすさ

 (浮浪者(暴徒)やハタレ魔は、日に三回息が切れて熱に苦しむが良い。神に助けを乞うて篝火を焚いて祈っても無駄さ。祝詞(のりと)を上げようが楽を奏でようが、天は聞き入れぬぞよ。唯、太陽と月と我だけが天下を悠々と照らすのさ。)

 ハタレは怒って再び矢のあられを射掛けて来ました。しかし今回はアマテル神の結ぶ印相(タミメ)により、矢は全部逸(そ)れて地に墜ちてしまいました。これを見て弥(いや)猛り怒ったハタレはアマテル神に向けて火花を吹きかけて来ました。この時、神は素早くミズハメの神(岡象女)を招いて炎を打ち消しました。これを知ったハタレ頭(カミ)が動揺し逃げようとするのを、タジカラオがハタレハルナに飛び掛かり格闘の末に押し縛りました。残るハタレ魔も全部捕り縛り神前に引き据え額ずかせると、その時アマテル神の八英輦(ヤフサテグルマ)の帳(たれ)が静かに上がり、この時真ん中に坐す君は胸にヤサカニ(八坂 )のマカルタマ(勾玉)を着けてお立ちになり、セオリツ姫は真経津(マフツ)のヤタカガミ(八呎鏡)を捧げ持って、アキツ姫はクサナギ(草薙)のヤエツルギ(八重垣剣)を携えていました。この後、皆厳かに会釈されて御座(きょざ)にご着席になりました。

 時にイフキドは額ずくハタレの頭(こうべ)を上げさせて、事ここに至った由(ゆえ)を問い正しました。ハルナは答えて、
 「僕(やつかれ)にネ(北陸)の益人(マスヒト・代官)の白人(シラヒト)が教えてくれました。もし手柄を立てれば国神に取り立ててやる。これはソサノオ(素佐雄)の勅命なりと」これを聞いたイフキドは、
 「もしこの話が真実なら、真経津(マフツ)の鏡に写して鑑みよう」と言って御鏡(みかがみ)に写せばはっきりと翼が写りました。イフキドいわく、
 「このハタレは鵺(ヌエ)アシモチぞ。妖術(バケワザ)に誑(たぶら)かすもの皆斬り捨てよ」
 この場に居合わせたクマノクスヒが、ここに熊野神(イサナミ)を勧請するとカラスが八羽一緒にやって来ました。
 これは昔イサナギが愛する妻イサナミに先立たれた時、悲しみのあまりその夜、神(かみ・霊体)となって妻に会いに行くと、イサナミは醜い死体を見せまいと醜女(しこめ)八人(八羽烏)に君を追い払わせました。最後にイサナギは、二度と妻に恥をかかせるような過ち無き事を守る為、この世と黄泉(よみ・ヨモツ)の国の間に限界岩(カギリイワ・磐座)を立てて、この岩を誓(ちかえ)し(道返し)の神と名付けた故事によります。
 ここでハタレの血を搾(しぼ)り、血の誓文(せいもん)を記して後、潮(うしお)を浴びさせ鏡に影を写して見ると、何と六魔(ムマ)の影はすでに消え失せていました。このようにして真人間に返った者は皆再び民となることができました。

 先に捕えて牢屋(ツツガ)に入れ置いた六(ム・族)ハタレ頭(カミ)と、今度の合戦相手のハルナの魔民(モノマ)五千人と、国神(クニカミ)に預け置いた捕虜四千人も皆召し出して、君の御前に据えて各々血を搾って盃(はい)に注ぐと、すぐにキクの三人にキツネの影が表われ名付けて三狐(ミツギツネ)と呼びました。残る三十三万のハタレは魂断ち(死刑)と一時は決まったところ、カダの神がハタレ魔民(モノマ)の命乞いを申し出ました。
 最初諸神はカダの同情的な申し入れを納得しませんでしたが、七度にも及ぶ誓いの様子はもう祝詞(ノリ)心地でその神妙な面持ちが理解されてやっと許しが出ました。
 詔のり。
 「三つ彦(三狐)の子孫及び諸狐は今後ウケノミタマ(宇迦御魂)を守護せよ。もしも怠けて裏切るなら速やかに魂断ち(死刑)せよ。この条件で汝カダマロに末永く従者として付け与えよう」
 カダの神はアマテル神の詔のりの趣旨を三兄弟に告げて後、三狐の配置を伝えました。
 「先ず兄彦はここ伊勢の花山に留まれ。中彦は山代(ヤマシロ)の花山野に出向け。弟彦(おとひこ)は東国の飛鳥野に行け」
 この様に狐も三方面に分けて配置し各々田畑の鳥や鼠を追う役割を与えました。この様な理由からウケノミタマ(宇迦御魂)とウケモチ(保食神)とカダ(荷田神)の三神を一社に合祀するようになりました。
 この後、シムミチもイソラもイヅナも皆血を抜いて血の誓約を璽(おしで)に染めさせた後に、潮を浴びて鏡に写し、それでもまだ猿や大蛇や蛟(むじな)の影が残っている百三十人は既に殺してしまいました。

 ここで詔のりがありました。
 「斬らばハタレの霊(たま)は永久に三熱炎(ミノホ)に悩み続けるぞ。人間に返ったら神の種とすれば良い。当分の間峰々に分け置くように」
 この時の魂返しの誓約を記した璽(おしで)の数は、ハタレ魔九千人と魔民(モノマ)九万人で、この璽を埋めた所が高野山(タカノ)の正に玉川(魂塚)ぞこれなり。

 イブキドヌシとアメエノミチの戦い(6)
 千磐谷(チワヤ)からアメエノミチが大御神(オオンカミ)に話しをするから来いとの連絡が入りました。君はイブキドを派遣して話し合いに応じました。今回はイブキドヌシがアマテル神の御幸輿(ミユキコシ)に乗って御幸しました。この輿を見たハタレは不思議に思い問うて言いました。
 「汝は神(カミ)か祗(ズミ)か」答えて
 「我は神の奴(やっこ)なり」又、ハタレは問うて言い、
 「奴(やっこ)が何故輿(コシ)に乗るのか」いわく、
 「汝を奴とせんため我が神の輿に乗るのだ」又、ハタレ言い、
 「汝、若輩(ワカハエ)のくせして我に恥をかかせる気か。おまえこそ奴にしてやる」
 と言うや天に雷鳴が響き渡りました。これはハタタ神(霹靂神)なりです。これに対しイブキドはウツロイ(空神)を招きこれを消しました。ハタレは今度は叢雲(むらくも)を起こして空を覆い闇で晦(くら)ませば、イブキドはシナド神(級長戸・風神)を招き風でこれを吹き払いました。ハタレは炎を吐いて室屋(ムロヤ・立穴式住居)を焼けば、イブキドはタツタ姫(メ・龍田姫、鎮火・防波神)を招きこれを消しました。
 ついにハタレは立ち籠める煙に咽(むせ)んで苦しまぎれに木の葉(天狗)の礫(つぶて)あられを投げて民を攻め立てました。
 これに対し友軍は頭巾(ヒレ)を着用して戦い、内側に橘(カグ)の果を隠し入れてハタレ目がけてばらまけば、ハタレ魔ははしたなく橘の果を奪い合いその隙を狙い皆捕え縛り上げました。これを知ったハタレ魔軍も皆頭巾を着けて貝独楽(べいごま)の様にクルクル回りながら攻めて来ました。これを見た友軍の兵は皆驚いて戦えず、イブキドヌシが敵の妖術を消そうと法螺貝(ほらがい)を吹かせると魔頭巾(マヒレ)は全て消え去り、今回も橘(カグ)を貪(むさぼ)らせて一網打尽にしました。
 次にハタレは槌(つち)で神に打ち掛かって来ました。神が厄除けの印相(タミメ)を結んで祈ると、打ち掛かって来た槌(つち)が裂けて丁度トベラ(海桐花)の葉の羽団扇(はうちわ)の様に開いて役立ちませんでした。
 ことここに至り、ハタレは動揺して逃げようとする所をタジカラオがむんずと掴んでついに蕨縄(わらびなわ)で縛り上げました。
 「さあ汝を奴(やっこ)とするぞ。なるや」と言えどもハタレ魔は黙りこくったまま返事をしません。いざ「覚悟」とばかりに剣を構え斬ろうとする所をイフキヌシがこれを留めてこれも誓わせて許してやりました。この血の誓約により十万(ヒマス)の魔民(モノマ)の天狗(アイヌ)影も無事に消え、やっと炎からも解放されて皆苦しみを逃れることができました。真っ当な人間に戻れた喜びに沸く人々は「千磐破(チワヤフ)る」(千磐谷の魔王を破って呪縛から解放された)と、神の恵みに感謝し千千(ちぢ)に拝んで去って行きました。

 (論功行賞)
 合計七十万九千(ナナマスコチ)余のハタレ共が無事人間に蘇った後日のことです。中宮セオリツ姫はこの栄えある御鏡を再び持ち出して、
 「後々の世のハタレ魔達にも、この真経津鏡(マフツノカガミ)を再び見せて真人間に戻してあげましょう」
 この尊いお言葉により、この地を二見岩(フタミノイワ)と名付けました。セオリツ姫の御心を写す尊い御鏡は再び見る(二見)浦の岩上に祭られて、たとえ代々荒潮(ヨヨあらしお)の八百会(ヤモアイ)浪に洗われたとて、決して錆びることを知らず伝来して後の世の神鏡(カンカガミ)となりました。

 又、高野山(タカノ)にはしばしば化け物が出て人々を怖がらせていましたが、イフキヌシが宮居をここに建てた所、霊が鎮まったのでアマテル神からタカノ神の神璽を賜わりました。
 又、カナザキは、戦いに勝利して諸民の暮らしを豊かに住み良くした所から、スミヨロシ(住吉)の神璽とともに神の御衣(ミハ)の裾尾(ソオ)に相当するツクシ(月隅国・九州)の地を賜わり、「ツクシ(九州)の民を統(すべ)て、結(ゆ)い治(おさ)むべし我が代わり」との詔のりも賜わりました。
 又、フツヌシは「カグヤマ(香具山・富士山)を司れ」(日本を司れ)と、カトリ神の神名を賜わりました。タケミカズチは雷神(ナルカミ)をも拉(ひし)ぐ戦功により、タケモノヌシ(武物主)の頭椎剣(カブツチ)と、以前全国の絵地図を作成して献上した貢献により、地震を鎮めるカナイシヅチ(要石椎剣)も賜わりました。ツワモノヌシ(兵主)の魂返しの術は、国中に清き誠の花を天から降らせ、神祭る道に天下(アモ)を成したので、シキアガタ(志貴県主)主に封じられて、アナシウオカミ(穴師大兵主神)の神璽に添えてなお、ウツシヒカンオジ(移し日神伯)と称えました。これはツワモノヌシの父イチヂが編集した魂返しの術が心を清く瓊(ト)の教えに結ぶ紀(ふみ)であるところからココトムスビ(心瓊産霊)と名を定めカスガドノ(春日殿)と尊ばせました。君がカナサキ(住吉)にのたまうには、 「万物(ヨロモノ・魔)斬れど魂返し乱れ緒(お)解けば神となる。今ハタレ魔も皆去り、我が気分は正に春日(かすが)の心地なり」と里の名も春日郷と名付け、住吉の翁の森(春日山)も更に賜わりました。後に、カトリの神の妹のアサカ姫がココトムスビの妻として生んだのがカスガマロ(春日麿)で、この真名(イミナ)ワカヒコ(若彦)が後の春日大社の御祭神アメノコヤネ(天児屋根)となりました。













(私論.私見)