サカムノオノノ さかむのおのの 相模の小野の
シロセメオ カタクマモレハ しろせめお かたくまもれは 城攻めを 固く守れば
アタヤカラ ヨモニタキキオ あたやから よもにたききお 仇族 四方に焚木を
ツミアケテ ナソカヒテリニ つみあけて なそかひてりに 積み上げて 七十日 日照りに
ヒセメナス カワキモユレハ ひせめなす かわきもゆれは 火攻めなす 乾き燃ゆれば
ヤマトタケ ヤクラノタケニ やまとたけ やくらのたけに ヤマトタケ 矢倉の岳に
ノホリミテ キヒタケヒコオ のほりみて きひたけひこお 登り見て キビタケヒコを
オオイソエ オオトモタケヒ おおいそえ おおともたけひ 大磯へ オオトモタケヒ
オオヤマノ キタニメクリテ おおやまの きたにめくりて 大山の 北に回りて
シロニイレ サネニワカチテ しろにいれ さねにわかちて 城に入れ 南北に分ちて
ヤマトタケ カミスキキヨメ やまとたけ かみすききよめ ヤマトタケ 髪 梳き清め
シラカシノ タチオハラミノ しらかしの たちおはらみの 白橿の 太刀をハラミの
ミハシラト イノルヒミツノ みはしらと いのるひみつの 御柱と 祈る火水の
(神体)
キヨハラヒ タツタノカミノ きよはらひ たつたのかみの 清祓 タツタの神の
アラワレテ コノシロヰケノ あらわれて このしろゐけの 現れて 高聳池の
タツノアメ フリヒオケセハ たつのあめ ふりひおけせは 竜の雨 降り 火を消せば
ミヤイクサ イサミテアタオ みやいくさ いさみてあたお 宮軍 勇みて仇を
ナカハウツ ミナニケチレハ なかはうつ みなにけちれは 半ば討つ 皆 逃げ散れば
トキオアケ ムカヒイルトキ ときおあけ むかひいるとき 閧を上げ 迎ひ入る時
オトヒメハ キミノテオトリ おとひめは きみのておとり オト姫は 君の手を取り
(弟橘姫)
ヤスンセテ ヤツカレハシメ やすんせて やつかれはしめ 安んせて 「僕 始め
オノオノカ マサニヤケンオ おのおのか まさにやけんお 各々が まさに焼けんを
イノリマシ イマサイワヒニ いのりまし いまさいわひに 祈りまし 今 幸に
オカムトテ ヨロコヒナンタ おかむとて よろこひなんた 拝む」とて 喜び涙
(嬉し涙)
ソテヒタス ココニモトヒコ そてひたす ここにもとひこ 袖 浸す ここにモトヒコ
モロニフレ マツロハサレハ もろにふれ まつろはされは 諸に告れ 「服ろはざれば
コロスユエ オオンタカラカ ころすゆえ おおんたからか 殺す故 大御宝が
ミカリコフ コトハシメトテ みかりこふ ことはしめとて 恵り 請ふ」 "事始" とて
シハスヤカ カクカコタテテ しはすやか かくかこたてて 十二月八日 橘篭 立てて
シルシトス しるしとす 標とす
トキヤマトタケ ときやまとたけ 時 ヤマトタケ
オオイソオ カツサエワタス おおいそお かつさえわたす 大磯を 上総へ渡す
イクサフネ タタヨフカセオ いくさふね たたよふかせお 軍船 漂ふ 風を
(他動詞)
シツメント オトタチハナハ しつめんと おとたちはなは 静めんと オトタチバナは
ヘニノホリ アメツチイノリ へにのほり あめつちいのり 舳に上り 天地 祈り
ワカキミノ イツオヤマトニ わかきみの いつおやまとに 「我が君の 稜威をヤマトに
タテントス ワレキミノタメ たてんとす われきみのため 立てんとす 我 君のため
タツトナリ フネマモラント たつとなり ふねまもらんと 竜となり 船 守らん」と
ウミニイル モロオトロキテ うみにいる もろおとろきて 海に入る 諸 驚きて
モトムレト ツイニヱサレハ もとむれと ついにゑされは 求むれど 遂に得ざれば
ナミナキテ ミフネツキケリ なみなきて みふねつきけり 波 凪ぎて 御船 着きけり
(ツクモか)
ヤマトタケ カツサニイレハ やまとたけ かつさにいれは ヤマトタケ 上総に入れば
サカキヱニ カカミオカケテ さかきゑに かかみおかけて 榊枝に 鏡を掛けて
ムカヒマス カトリトキヒコ むかひます かとりときひこ 向かひます カトリトキヒコ
ヒテヒコト イキスオトヒコ ひてひこと いきすおとひこ ヒデヒコと イキスオトヒコ
(カシマ)
カネテマツ オオカシマヨリ かねてまつ おおかしまより 予て待つ オオカシマより
ミアヱナス みあゑなす 御饗なす
アシウラコエテ あしうらこえて 葦浦 越えて
(阿字ヶ浦)
ナコソハマ カリミヤニマス なこそはま かりみやにます 勿来浜 仮宮に坐す
ヒタカミノ ミチノクシマツ ひたかみの みちのくしまつ ヒタカミの ミチノク シマツ
ミチヒコト クニツコヰタリ みちひこと くにつこゐたり ミチヒコと 国造 五人
アカタヌシ モモナソヨタリ あかたぬし ももなそよたり 県主 百七十四人
ヨロヤカラ タケノミナトニ よろやから たけのみなとに 万族 タケの水門に
コハムトキ タケヒオヤリテ こはむとき たけひおやりて 拒む時 タケヒを遣りて
コレオメス シマツノカミハ これおめす しまつのかみは これを召す シマツの守は
(ミチヒコ)
アラカシメ イサワニオソレ あらかしめ いさわにおそれ あらかじめ 威多に恐れ
ユミヤステ ミマエニフシテ ゆみやすて みまえにふして 弓矢 棄て 御前に伏して
マツロヒヌ まつろひぬ 服ひぬ
タケヒマタユク たけひまたゆく タケヒ また行く
ヒタカミノ ミチノクニツク ひたかみの みちのくにつく ヒタカミの ミチノクに告ぐ
サヲシカト ミチノクカトニ さをしかと みちのくかとに 直御使人 ミチノク 門に
(タケヒ)
イテムカエ ミチノクイワク いてむかえ みちのくいわく 出で迎え ミチノク 曰く
イマナンチ ヒトノスヘラキ いまなんち ひとのすへらき 「今 汝 人の皇
<神ならぬ>
キミトシテ ツカエルナンチ きみとして つかえるなんち 君として 仕える汝
(「仕ふ」の連体形)
オトロエリ イマキテクニオ おとろえり いまきてくにお 衰えり 今 来て 国を
ウハワンヤ タケヒノイワク うはわんや たけひのいわく 奪わんや」 タケヒの曰く
カミノミコ ナンチオメセト かみのみこ なんちおめせと 「神の御子 汝を召せど
マツロハス カレニウツナリ まつろはす かれにうつなり 服わず 故に討つなり」
コタエイフ コレナンノコト こたえいふ これなんのこと 応え言ふ 「これ 何の言
<神の御子とは>
ナンノイヰ ソレワカクニハ なんのいゐ それわかくには 何の謂 それ我が国は
オオミヲヤ タカミムスヒノ おおみをや たかみむすひの 大上祖 タカミムスビの
(キノトコタチ)
コノクニオ ヒラキテナナヨ このくにお ひらきてななよ この国を 開きて七代
(タカキネまで)
コレオツク ヒノカミココニ これおつく ひのかみここに これを継ぐ 日の神 ここに
(アマテル)
ミチマナフ カレヒタカミソ みちまなふ かれひたかみそ 道 学ぶ 故 日高みぞ
(日神が学び高まる所)
アメノミコ チチヒメトウム あめのみこ ちちひめとうむ 天の御子 チチ姫と生む
(オシホミミ)
ミコフタリ ヱハアスカミヤ みこふたり ゑはあすかみや 御子 二人 兄はアスカ宮
(テルヒコ)
トハハラミ ソノトキクニオ とははらみ そのときくにお 弟はハラミ その時 国を
(キヨヒト) (オシホミミの罷る時ヒタカミ国を)
タマワリテ ソヨノハツコノ たまわりて そよのはつこの 賜わりて 十四の裔の
ワレマテハ ヨソノタウケス われまては よそのたうけす 我までは 他所の治 受けず
ソレノキミ アスカオウチテ それのきみ あすかおうちて それの君 アスカを討ちて
(神武天皇) (ニギハヤヒ)
クニオトル カミニタカエリ くにおとる かみにたかえり 国を盗る 神に違えり
カレナレス イママタキタリ かれなれす いままたきたり 故 平れず 今 また来たり
トラントス コレモカミカヤ とらんとす これもかみかや 盗らんとす これも神かや
スヘキミヨ すへきみよ 皇君よ」
タケヒホホヱミ たけひほほゑみ タケヒ ほほえみ
コレナンチ ヰナカニスンテ これなんち ゐなかにすんて 「これ汝 井中に住んで
サワオミス コトヨキニニテ さわおみす ことよきににて 沢を見ず 言 善きに似て
アタラスソ シカトキクヘシ あたらすそ しかときくへし 当らずぞ 確と聞くべし
コレトカン ムカシアスカノ これとかん むかしあすかの これ説かん 昔 アスカの
ナカスネカ フミヌスメトモ なかすねか ふみぬすめとも ナガスネが 文 盗めども
(世嗣文)
アスカキミ タタサヌユエニ あすかきみ たたさぬゆえに アスカ君 正さぬ故に
(ニギハヤヒ)
ノリクタセ ホツマチヒロム のりくたせ ほつまちひろむ 『乗り下せ ホツマ方 平む
[宣 下せ] [ほつま道 広む]
アマモイワフネ あまもいわふね 天下 斎船』
[天地も祝うね]
ヨニウタフ シホツヲキナカ よにうたふ しほつをきなか 万に謳ふ シホツ翁が
コレユキテ ムケサランヤト これゆきて むけさらんやと 『これ行きて 平けざらんや』と
ススムユエ ヤマトタタセハ すすむゆえ やまとたたせは 勧む故 大和 正せば
ヲヲンカミ カシマノカミニ ををんかみ かしまのかみに 大御神 カシマの神に
(アマテル) (タケミカツチ)
ミコトノリ ユキテウツヘシ みことのり ゆきてうつへし 御言宣 『行きて討つべし』
ソノコタエ ワレユカストモ そのこたえ われゆかすとも その応え 『我 行かずとも
クニムケノ ツルキクタシテ くにむけの つるきくたして 国平けの 剣 下して
タカクラニ コレササケシム たかくらに これささけしむ タカクラに これ 捧げしむ』
タケヒトハ キミタルイトノ たけひとは きみたるいとの タケヒトは 君たる威徳の
(神武天皇) (=イトウ)
アルユエニ アメヨリツツク あるゆえに あめよりつつく ある故に 天より続く
(アマテル)
カミノミコ ヨヨニアマテル かみのみこ よよにあまてる 神の御子 代々に天地 照る
<然れば遍く> (他動詞)
ナンチヨヨ キミナクコヨミ なんちよよ きみなくこよみ 汝 代々 君 無く 暦
イツレソヤ コタエテイセト いつれそや こたえていせと 何れぞや」 答えて「伊勢」と
(ヒヨミの宮)
マタイワク アマテラスカミ またいわく あまてらすかみ また曰く 「天地 照らす神
コヨミナシ ソロウエサセテ こよみなし そろうえさせて 暦 成し ソロ 植えさせて
カテフヤシ ミオタモタシム かてふやし みおたもたしむ 糧 増やし 身を保たしむ」
モモナソコ ヨロミチツツク ももなそこ よろみちつつく 「百七十九 万三千 続く
<アマテル神は>
<地に顕現の後>
コノヨミテ イマヒノワチニ このよみて いまひのわちに この世 見て 今 日輪内に
[回て]
オワシマス ミマコノヨヨノ おわします みまこのよよの 御座します 御孫の代々の
(その子孫)
タミヲサム ヒニナツラエテ たみをさむ ひになつらえて 民 治む 日に擬えて
アマキミソ ナンチハヨヨニ あまきみそ なんちはよよに 天君ぞ 汝は代々に
ミノリウケ イノチツナキテ みのりうけ いのちつなきて 実り 受け 命 つなぎて
イマタソノ キミニカエコト いまたその きみにかえこと 未だ その 君に返言
モフサヌハ ソノツミツモリ もふさぬは そのつみつもり 申さぬは その罪 積もり
イクラソヤ ヌケミチアリヤ いくらそや ぬけみちありや 幾らぞや 抜け道ありや
ワカキミハ カミナラスヤト わかきみは かみならすやと 我が君は 神ならずや」と
コノトキニ ミチノクオヨヒ このときに みちのくおよひ この時に ミチノク及び
ミナフシテ マツロヒクレハ みなふして まつろひくれは 皆 伏して 服ひ来れば
ヤマトタケ ミチノクユルシ やまとたけ みちのくゆるし ヤマトタケ ミチノク 許し
ナコソヨリ キタハミチノク なこそより きたはみちのく 勿来より 北はミチノク
クニノカミ モカタノハツホ くにのかみ もかたのはつほ 国の守 百県の果穂
ササケシム ツカルヱミシハ ささけしむ つかるゑみしは 捧げしむ 津軽蝦夷は
ミチヒコニ ナソカタハツホ みちひこに なそかたはつほ ミチヒコに 七十県 果穂
ササケシム ミナミハヒタチ ささけしむ みなみはひたち 捧げしむ 南は常陸
カツサアワ ミカサカシマニ かつさあわ みかさかしまに 上総・安房 ミカサカシマに
(大鹿島)
タマワリテ カシマヒテヒコ たまわりて かしまひてひこ 賜りて カシマヒデヒコ
トキヒコモ オトヒコミタリ ときひこも おとひこみたり トキヒコも オトヒコ 三人
ミハタマフ みはたまふ 御衣 賜ふ
クニツコヰタリ くにつこゐたり 国造 五人
<津軽・陸奥の>
カミノミチ シイテモフセハ かみのみち しいてもふせは 神の道 強いて申せば
(=陽陰の道)
メシツレテ イタルニハリエ めしつれて いたるにはりえ 召し連れて 至る 新治へ
ヱミシカラ カソニシキトハ ゑみしから かそにしきとは 蝦夷から 上錦 十機
(津軽蝦夷)
ワシノハノ トカリヤモモテ わしのはの とかりやももて 鷲の羽の 尖矢 百手
タテマツル ミチノクヨリハ たてまつる みちのくよりは 奉る 陸奥よりは
(旧ヒタカミ)
キカネトヲ クマソヤモモテ きかねとを くまそやももて 黄金 十重 クマソ矢 百手
タテマツル コノユキオモク たてまつる このゆきおもく 奉る この靫 重く
フモヲアリ オイテモトムル ふもをあり おいてもとむる 二百重あり 負い手 求むる
オオトモノ サフライヨタリ おおともの さふらいよたり オオトモの 侍 四人
(タケヒ)
オイカハリ ツクハニノホリ おいかはり つくはにのほり 負い替り 筑波に登り
キミトミモ ツサヘテイタル きみとみも つさへていたる 君 臣も 西南 経て至る
サカオリノ ミヤニヒクレテ さかおりの みやにひくれて サカオリの 宮に日暮れて
(諏訪サカオリ)
タヒオソク シカレハコタエ たひおそく しかれはこたえ 灯 遅く 叱かれば応え
ユキオモク ツカレネフリテ ゆきおもく つかれねふりて 「靫 重く 疲れ眠りて
クレシラス マタイフヨタリ くれしらす またいふよたり 暮れ 知らず」 また言ふ 四人
アヒマチソ ナンチハカリカ あひまちそ なんちはかりか 「合ひ待ちぞ 汝ばかりが
ナトツカル チカライトハハ なとつかる ちからいとはは 何ど疲る 力 厭はば
ウタオヨメ コタエテカミノ うたおよめ こたえてかみの 歌を詠め」 応えて「上の
ミヨハウタ イマハチカラヨ みよはうた いまはちからよ 御代は歌 今は力よ」
トキニキミ コレキコシメシ ときにきみ これきこしめし 時に君 これ 聞こし召し
(ヤマトタケ)
ツスハツネ ウタミニソメテ つすはつね うたみにそめて 十九初音 歌見に染めて
カエセヨト ナカエタマハル かえせよと なかえたまはる 「返せよ」と 詠え給はる
ニヰハリツ ツクハオスキテ にゐはりつ つくはおすきて 『新治 出 筑波を過ぎて
(新治を発ち) (筑波山を越えて)
イクヨカネツル いくよかねつる 幾夜日 寝つる』
(完了の「つ」の連体形)
モロナサス ヒトホシヨスナ もろなさす ひとほしよすな 諸 済さず 火灯し ヨスナ
(返す) (ソロリヨスナ)
キミノウタ カエシモフサク きみのうた かえしもふさく 君の歌 返し申さく
カカナエテ ヨニハココノヨ かかなえて よにはここのよ 『かがなえて 夜には九の夜
1.(昼夜を総べて)
2.(考えてみると)
ヒニハトオカオ ひにはとおかお 日には十日を』
ヤマトタケ ヒトホシホメテ やまとたけ ひとほしほめて ヤマトタケ 火灯し 褒めて
タケタムラ ホカハハナフリ たけたむら ほかははなふり タケタ村 他はハナフリ
(タケ賜村)
タケヒオハ ユキヘオカネテ たけひおは ゆきへおかねて タケヒをば 靫侍を兼ねて
カヒスルカ フタクニカミト かひするか ふたくにかみと 甲斐・駿河 二国守と
コトオホム ことおほむ 殊を褒む
キミヤマノヒハ きみやまのひは 君 山の日は
ユキヤスミ ワカキミニイフ ゆきやすみ わかきみにいふ 靫 休み 我が君に言ふ
(靫負) (タケヒ)
スヘラキミ ヤツラハナフリ すへらきみ やつらはなふり 「統君 僕等 ハナフリ
(ヤマトタケ)
ソロリニハ タケタタマハル そろりには たけたたまはる ソロリには タケタ 賜はる
(ヨスナ) (タケタ村)
ナンノコト タケヒノイワク なんのこと たけひのいわく 何の殊」 タケヒの曰く
ウタノコト マタトフカレハ うたのこと またとふかれは 「歌の殊」 また問ふ「彼は
アワナラス ナニノウタソヤ あわならす なにのうたそや アワならず 何の歌ぞや」
(アワ歌)
マタイワク ツツウタムカシ またいわく つつうたむかし また曰く 「連歌 昔
サユリヒメ トシソコノトキ さゆりひめ としそこのとき サユリ姫 歳 十九の時
タキシミコ シタヒコフユエ たきしみこ したひこふゆえ タギシ御子 慕ひ恋ふ故
ソノチチカ ヨヒタストキニ そのちちか よひたすときに その父が 呼び出す時に
(神武)
ヒメサトリ ノソクツツウタ ひめさとり のそくつつうた 姫 悟り 除く連歌
アメツツチ トリマスキミト あめつつち とりますきみと 『天つ地 娶ります君と
ナトサケルトメ なとさけるとめ 何ど割ける 止』
(継句の拒否)
ソノツツス カソエテナカオ そのつつす かそえてなかお その連子 数えて中を
ツホカナメ コノウタツツキ つほかなめ このうたつつき 壺要 この歌 続き
(10音目のキ)
カソエモノ オリアワセメニ かそえもの おりあわせめに 数え物 折合せ目に
ケリモアリ キミトワレトハ けりもあり きみとわれとは "けり" もあり 君と我とは
(天) (地)
ツツキケリ ヨコカメトルオ つつきけり よこかめとるお 続きけり よこかめ取るを
(やっかむ)
サカシマニ ルトメニトメテ さかしまに るとめにとめて 逆しまに "るとめ" に止めて
タチキレハ マメモミサホモ たちきれは まめもみさほも 断ち切れば 忠も操も
アラワセリ カレソコモツス あらわせり かれそこもつす 表わせり 故 "十九" も "ツズ"
モノモツス ツツキウタナリ ものもつす つつきうたなり "物" も "ツズ" 続き歌なり
(言)
ナツカハキ ココニヰテトフ なつかはき ここにゐてとふ ナツカハギ ここに居て問ふ
ツキアリヤ タケヒコタエテ つきありや たけひこたえて 「継ぎありや」 タケヒ 答えて
ヤソアリテ ハツハオコリト やそありて はつはおこりと 「八十ありて 初は "起り" と
(起)
ツキハウケ ミツハウタタニ つきはうけ みつはうたたに 次は "受け" 三つは "転たに"
(承) (転)
ヨツアワセ ヰツハタタコト よつあわせ ゐつはたたこと 四つ "合せ" 五つは "立言"
(結)
ムツハツレ ナナハツキツメ むつはつれ ななはつきつめ 六つは "連れ" 七は "尽詰"
ヤツハツキ オモテヨツラネ やつはつき おもてよつらね 八つは "尽き" 表 四連ね
マメミサホ マテニカヨハス まめみさほ まてにかよはす 忠 操 両方に通わす
(表裏)
ウラヨツレ ハツハカシラノ うらよつれ はつはかしらの 裏 四連れ 果つば 頭の
(終れば)
ヰヲシテエ メクラシツラヌ ゐをしてえ めくらしつらぬ 五ヲシテへ 巡らし連ぬ
(還し)
ソノツキハ ウチコシココロ そのつきは うちこしこころ その継ぎは "打越" "心"
ウタタサリ モトニムラカル うたたさり もとにむらかる "転" "去" 本に群がる
ヒトツラネ ソムオヒトオリ ひとつらね そむおひとおり 一連ね 十六(句)を一織
スヘヰオリ ヤソオモモトシ すへゐおり やそおももとし 総べ五織 八十を百とし
(百とすると)
オリハフソ カレオリトメノ おりはふそ かれおりとめの 織は二十 故 織留の
(1織は20句) (各織の第20句)
ツスハタチ オリハツのツス つすはたち おりはつのつす ツズ "ハタチ" 織初のツズ
(各織の第1句)
アヒカナメ オリツメノツス あひかなめ おりつめのつす "合要" 織詰のツズ
(各織の第19句)
(また一の織詰を"ツズ")
ミソコハナ ミノツメヰソコ みそこはな みのつめゐそこ 三十九 "ハナ" 三の詰 五十九
(二の織詰)
ツスサツメ ヨノツメナソコ つすさつめ よのつめなそこ ツズ "サツメ" 四の詰 七十九
ツスフツメ ヰノツメコソコ つすふつめ ゐのつめこそこ ツズ "フツメ" 五の詰 九十九
ツスツクモ ヰフシニホヒノ つすつくも ゐふしにほひの ツズ "ツクモ" 五節 匂の
ハナハユリ モトウタハキミ はなはゆり もとうたはきみ 花は百合 本歌は君
(ユリ姫とタケヒトを暗示)
ソノアマリ ヱタヤハツコオ そのあまり ゑたやはつこお その余り 枝や裔を
ヤソツツキ ナオフカキムネ やそつつき なおふかきむね 八十 続き なお深き旨
(他四段)
ナライウクヘシ ならいうくへし 習い受くべし」
マタトフハ ヤソオモモトス またとふは やそおももとす また問ふは 「八十を百とす
カスイカン コタエハカナメ かすいかん こたえはかなめ 数 如何ん」 答えは「要
マタクハル モトウタオフソ またくはる もとうたおふそ また配る 本歌を二十」
(百句中に本歌が20回巡り来る)
カエシトフ ユリカハシメカ かえしとふ ゆりかはしめか 返し問ふ 「ユリが初めか」
コタエイフ カミヨニモアリ こたえいふ かみよにもあり 答え言ふ 「上代にもあり
ミヲヤカミ ツツノヲシテヤ みをやかみ つつのをしてや 御祖神 連のヲシテや
(ウガヤ) →27文
アメミコノ ヒウカニイマス あめみこの ひうかにいます 天御子の 日向に坐す
(タケヒト) <時の>
ヤマトチノ ハヤリウタニモ やまとちの はやりうたにも ヤマト方の 流行り歌にも
(本州地方)
ノリクタセ ホツマチヒロム のりくたせ ほつまちひろむ 『乗り下せ ホツマ方 平む
[宣 下せ] [ほつま道 広む]
アマモイワフネ あまもいわふね 天下 斎船』
[天地も祝うね]
シホツツヲ ススメテヤマト しほつつを すすめてやまと シホツツヲ 勧めて大和
ウタシムル コレオリカエニ うたしむる これおりかえに 討たしむる これ 折返に
アヒツアリ カレウチトルオ あひつあり かれうちとるお "天日西" あり 故 討ち取るを
(天日は西にあり)
ヨシトナス ユリヒメモツツ よしとなす ゆりひめもつつ 好しとなす ユリ姫も十九(歳)
ウタモツツ マメトミサホト うたもつつ まめとみさほと 歌も十九(音) 忠と操と
アラワセハ ツツキウタヨム あらわせは つつきうたよむ 表わせば 続き歌 詠む
ノリトナル ツイニホツマノ のりとなる ついにほつまの 法となる」 「遂にホツマの
(東国)
マツリコト アメニトホレハ まつりこと あめにとほれは 政事 天に通れば
(中央政府)
コトコトク マツロフトキソ ことことく まつろふときそ 悉く 服う時ぞ
<報奨として>
ウタハクニ チカラハアタヒ うたはくに ちからはあたひ 歌は地 力は値
(力業にはハナフリ)
タマハリシ キミハカミカト たまはりし きみはかみかと 賜はりし」 「君は神か」と
ミナメツム みなめつむ 皆 愛つむ
(賛美する)
コソヨリツツキ こそよりつつき 去年より継つき
アメハレテ ムツキスエヤカ あめはれて むつきすえやか 雨 晴れて 一月二十八日
ミユキフリ キミソリニメシ みゆきふり きみそりにめし み雪 降り 君 ソリに召し
ユキイタル サカムノタチニ ゆきいたる さかむのたちに 行き至る 相模の館に
イリマセハ ノニカタアフミ いりませは のにかたあふみ 入りませば 野に片鐙
トラカシハ ヒロヒカンカエ とらかしは ひろひかんかえ トラガシハ 拾ひ考え
アフミサシ イマタテマツル あふみさし いまたてまつる 鐙 挿し 今 奉る
タマカサリ ホメテタマワル たまかさり ほめてたまわる 珠飾り 褒めて賜わる
ムラノナモ タマカワアフミ むらのなも たまかわあふみ 村の名も タマカワアフミ
(珠交鐙)
(多摩川青梅)
ミサシクニ サカムノクニト みさしくに さかむのくにと ミサシ国 相模の国と
(武蔵)
モトヒコニ ナツケタマワル もとひこに なつけたまわる モトヒコに 名付け賜わる
クニツカミ くにつかみ 国つ守
マチカテチカノ まちかてちかの マチカ・テチカの
トミフタリ ヲトタチハナノ とみふたり をとたちはなの 臣 二人 ヲトタチハナの
クシトオヒ ウレハナケキテ くしとおひ うれはなけきて 櫛と帯 得れば 嘆きて
ヒメノタメ ツカリアヒキノ ひめのため つかりあひきの 姫のため 連り天引の
マツリナス コレソサノヲノ まつりなす これそさのをの 祭りなす これソサノヲの
オロチオハ ツカリヤスカタ おろちおは つかりやすかた オロチをば 連り ヤスカタ
カミトナシ ハヤスヒヒメモ かみとなし はやすひひめも 神となし ハヤスヒ姫も
アシナツチ ナナヒメマツル あしなつち ななひめまつる アシナツチ 七姫 祭る
タメシモテ カタミオココニ ためしもて かたみおここに 例し以て 形見をここに
<骸に代えて> <納めて>
ツカトナシ ナモアツマモリ つかとなし なもあつまもり 塚となし 名も吾妻守
(墓) [東守]
オホイソニ ヤシロオタテテ おほいそに やしろおたてて 大磯に 社を建てて
カミマツリ ココニトトマル かみまつり ここにととまる 神祭 ここに留まる
ハナヒコハ ワカサキミタマ はなひこは わかさきみたま ハナヒコは 我が先御魂
シロシメシ カワアヒノノニ しろしめし かわあひののに 知ろしめし 川合の野に
オホミヤオ タテテマツラス おほみやお たててまつらす 大宮を 建てて祭らす
ヒカワカミ イクサウツハハ ひかわかみ いくさうつはは ヒカワ神 軍器は
(ハナキネ)
チチフヤマ ちちふやま 秩父山
キサラキヤカニ きさらきやかに 二月八日に
クニメクリ マツラフシルシ くにめくり まつらふしるし 国周り 服ふ標
(国中で)
カクカコオ ヤムネニササケ かくかこお やむねにささけ 橘篭を 屋棟に捧げ
コトヲサメ ホツマノヨヨノ ことをさめ ほつまのよよの "事納" ホツマの代々の
ナラハセヤ ならはせや 習わせや
ウスヰノサカニ うすゐのさかに 碓氷の坂に
ヤマトタケ ワカレシヒメオ やまとたけ わかれしひめお ヤマトタケ 別れし姫を
(オトタチバナ姫)
オモヒツツ キサオノソミテ おもひつつ きさおのそみて 思ひつつ 東南を望みて
オモヒヤリ カタミノウタミ おもひやり かたみのうたみ 思ひ遣り 形見の歌見
トリイタシミテ とりいたしみて 取り出だし 見て
サネサネシ サカムノオノニ さねさねし さかむのおのに 『実々し 相模の小野に
モユルヒノ ホナカニタチテ もゆるひの ほなかにたちて 燃ゆる日の 火中に立ちて
トヒシキミハモ とひしきみはも 訪ひし君はも』
コレミタヒ アツマアワヤト これみたひ あつまあわやと これ 三度 吾妻 あわやと
ナケキマス アツマノモトヤ なけきます あつまのもとや 嘆きます 東の元や
オヒワケニ キヒタケヒコハ おひわけに きひたけひこは 追分に キビタケヒコは
コシチユク クニサカシラオ こしちゆく くにさかしらお 越方 行く 国盛衰を
ミセシムル タケヒハサキニ みせしむる たけひはさきに 見せしむる タケヒは先に
サカムヨリ ヱミシノミヤケ さかむより ゑみしのみやけ 相模より ヱミシの土産
モチノホリ ミカトニササケ もちのほり みかとにささけ 持ち上り 帝に捧げ
コトコトク マツラフカタチ ことことく まつらふかたち 悉く 服ふ形
モフサシム ヒトリミユキノ もふさしむ ひとりみゆきの 申さしむ 一人 御幸の
ヤマトタケ シナノキソチハ やまとたけ しなのきそちは ヤマトタケ 信濃・木曽方は
ヤマタカク タニカスカニテ やまたかく たにかすかにて 山 高く 谷 微かにて
ツツラオリ カケハシツタヒ つつらおり かけはしつたひ 葛折 懸橋 伝ひ
ムマユカス クモワケアユミ むまゆかす くもわけあゆみ 馬 行かず 雲 分け歩み
ウエツカレ ミネノミアエニ うえつかれ みねのみあえに 飢え疲れ 峰の御饗に
ナルシラカ マエニイキハキ なるしらか まえにいきはき 現る白鹿 前に穢気 吐き
(御前)
クルシムル キミハシロシテ くるしむる きみはしろして 苦しむる 君は知ろして
ヒルヒトツ ハシケハマナコ ひるひとつ はしけはまなこ 蒜 一つ 弾けば 眼
ウチコロス ナオクモオオヒ うちころす なおくもおおひ 打ち殺す なお雲 覆ひ
ミチタツオ ヒミツノハラヒ みちたつお ひみつのはらひ 道 断つを 火水の祓ひ
ミタヒノル シナトノカセニ みたひのる しなとのかせに 三度 宣る シナトの風に
フキハラフ カミノシライヌ ふきはらふ かみのしらいぬ 吹き払ふ 神の白狗
ミチヒキテ ミノニイツレハ みちひきて みのにいつれは 導きて 美濃に出づれば
タケヒコモ コシヨリカエリ たけひこも こしよりかえり タケヒコも 越より帰り
(吉備武彦)
ココニアフ サキニキソチノ ここにあふ さきにきそちの ここに会ふ 先に木曽方の
オエフスモ ハライマヌカル おえふすも はらいまぬかる 衰え臥すも 祓い 免る
(者も)
シカノチハ ヒルオカミヌリ しかのちは ひるおかみぬり 「鹿の霊は 蒜を噛み塗り
(命令形)
サカイキニ アタラシモノト さかいきに あたらしものと 邪気に 当らじもの」と
カタリタマヒキ かたりたまひき 語り給ひき