【原文カタカナ訳】 【語源考察】 【漢字読み下し】
ヒシロノヨクマソウツアヤ
ミホノハル キサラキハツヒ みほのはる きさらきはつひ 三年の春 二月初日
(天鈴790年)
キノクニニ カミマツラント きのくにに かみまつらんと 紀の国に 神 祭らんと
ウラナエハ ユクハヨカラス うらなえは ゆくはよからす 占えば 「行くは好からず」
ミユキヤメ オシマコトノコ みゆきやめ おしまことのこ 御幸 止め オシマコトの子
ウマシタケ ヰココロヤリテ うましたけ ゐこころやりて ウマシタケ ヰココロ 遣りて
マツラシム アヒカシハラニ まつらしむ あひかしはらに 祭らしむ 阿備柏原に
コトセスム キノウチマロカ ことせすむ きのうちまろか 九年 住む 紀のウチマロが
(紀の国造)
ヤマトカケ メトリテウムコ やまとかけ めとりてうむこ ヤマトカゲ 娶りて生む子
(山下影媛)
タケウチソ たけうちそ タケウチぞ
(武内宿禰)
ヨホキサラモチ よほきさらもち 四年二月十五日
(天鈴791年)
ミノニユク トミラモフサク みのにゆく とみらもふさく 美濃に行く 臣等 申さく
<天皇>
ヨキメアリ ヤサカタカヨリ よきめあり やさかたかより 「好き女あり ヤサカタカヨリ
ココナキリ ウエテタノシム ここなきり うえてたのしむ 菊 桐 植えて楽しむ
ココリミヤ カレコレヱント ここりみや かれこれゑんと 菊桐宮」 故 「これ 得ん」と
(泳宮)
ミユキシテ ミノタカキタノ みゆきして みのたかきたの 御幸して 美濃 高北の
タカヨリノ ココリノミヤニ たかよりの ここりのみやに タカヨリの 菊桐の宮に
カリイマス イケスノソメハ かりいます いけすのそめは 仮り居ます 生簀 望めば
サシノソク オトヒメトメテ さしのそく おとひめとめて 差し覗く オト姫 留めて
キミメシツ ヒメオモエラク きみめしつ ひめおもえらく 君 召しつ 姫 思えらく
イセノミチ カヨエルノリモ いせのみち かよえるのりも 妹背の道 通える法も
(「通ふ」の連体形)
ツヤナラス キミニモフサク つやならす きみにもふさく 艶ならず 君に申さく
ヤツカレハ トツキコノマス やつかれは とつきこのます 「僕は 婚ぎ 好まず
ミアラカニ メスモヨカラス みあらかに めすもよからす 御殿に 召すも好からず
アネカナオ ヤサカイリヒメ あねかなお やさかいりひめ 姉が名を ヤサカイリ姫
スカタヨク キサヒノミヤニ すかたよく きさひのみやに 姿 好く 后の宮に
メサルトモ ミサホナランカ めさるとも みさほならんか 召さるとも 操 成らんが」
(受身) (成ると思うが・・・)
キミユルシ アネヒメオメス きみゆるし あねひめおめす 君 許し 姉姫を召す
ネシモハヒ マキムキヒシロ ねしもはひ まきむきひしろ 十一月初日 纏向日代
ニイミヤニ カエリイリマス にいみやに かえりいります 新宮に 帰り入ります
ヤサカヒメ ナルミノウチメ やさかひめ なるみのうちめ ヤサカ姫 なる 美濃内侍
ヰホネシモ ソヰカヒノテニ ゐほねしも そゐかひのてに 五年十一月 十五日 日の出に
(天鈴792年)
ウムコノナ ワカタリヒコソ うむこのな わかたりひこそ 生む子の名 ワカタリヒコぞ
(稚足彦)
タカヨリハ ヒノマエモフテ たかよりは ひのまえもふて タカヨリは 日の前 詣で
(天日の前宮)
ウチマロカ タチテマコウム うちまろか たちてまこうむ 'ウチマロが 館で孫 生む
ヰココロカ イムナオコエハ ゐこころか いむなおこえは ヰココロが' 斎名を請えば
タカヨリカ イムナタカヨシ たかよりか いむなたかよし タカヨリが 斎名 タカヨシ
ナハウチト タケウチマロソ なはうちと たけうちまろそ 名はウチと タケウチマロぞ
キシトヘハ タカヨリノホル きしとへは たかよりのほる 雉 飛べば タカヨリ 上る
<都へ>
ウチマロモ ウチミヤニユキ うちまろも うちみやにゆき ウチマロも 内宮に行き
コトホキス キミヨロコヒテ ことほきす きみよろこひて 言祝す 君 喜びて
イムナコフ ウチマロササク いむなこふ うちまろささく 斎名 請ふ ウチマロ 捧ぐ
ウチヒトハ ヨツキミコナリ うちひとは よつきみこなり ウチヒトは 世嗣御子なり
(ワカタリヒコ) (成務天皇)
ミノウチメ ナルスケウムコ みのうちめ なるすけうむこ 美濃内侍 なる スケ 生む子
ヰモキヒコ イムナススキネ ゐもきひこ いむなすすきね ヰモキヒコ 斎名 スズキネ
(五百城入彦)
オシワケト ワカヤマトネト おしわけと わかやまとねと オシワケと ワカヤマトネと
(忍之別) (稚倭根子)
オオスワケ ツキヌノシヒメ おおすわけ つきぬのしひめ オオズワケ 次 ヌノシ姫
(大酢別) (渟熨斗媛)
ヌナキヒメ カノコヨリヒメ ぬなきひめ かのこよりひめ ヌナキ姫 カノコヨリ姫
(渟名城媛) (麛依姫)
ヰモキヒメ ヰソサキヒコニ ゐもきひめ ゐそさきひこに ヰモキ姫 ヰソサキヒコに
(五百城入姫) (五十狭城入彦)
キヒヱヒコ ツキタカキヒメ きひゑひこ つきたかきひめ キビヱヒコ 次 タカギ姫
(吉備兄彦) (高城入姫)
オトヒメソ おとひめそ オト姫ぞ
(弟姫)
マタイワツクノ またいわつくの またイワツクの
(磐衝別命)
コノミツハ イラツメミオノ このみつは いらつめみおの 子のミツハ イラツ姫 三尾の
スケウムコ ヰモノメクスコ すけうむこ ゐものめくすこ スケ 生む子 ヰモノ姫クスコ
(五百野媛久須姫)
ウチヲキミ うちをきみ 内親君
マタイソノカミ またいそのかみ また争の守
ヰソキネノ ヰカワスケウム ゐそきねの ゐかわすけうむ ヰソキネの ヰカワ スケ 生む
(ニシキイリヒコ) (五十河媛)
カンクシト ヰナセヒコマタ かんくしと ゐなせひこまた カンクシと ヰナセヒコ また
(神櫛) (稲背入彦)
アヘココト タカタウチウム あへここと たかたうちうむ アベコゴト タカタ内(侍) 生む
(阿部木事) (高田媛)
タケコワケ たけこわけ タケコワケ
(武国凝別)
マタソヲタケカ またそをたけか また 曽於 タケが
(襲武)
タケヒメハ ソムツキハラミ たけひめは そむつきはらみ タケ姫は 十六月 孕み
(武媛)
フタコウム クニコリワケト ふたこうむ くにこりわけと 双子 生む クニコリワケと
(国凝別)
クニチワケ ツキミヤチワケ くにちわけ つきみやちわけ クニヂワケ 次 ミヤヂワケ
(国乳別) (宮道別)
トヨトワケ とよとわけ トヨトワケ
(豊戸別)
ヒウカミユキニ ひうかみゆきに 日向御幸に
カミナカカ ヲタネオシモメ かみなかか をたねおしもめ カミナガが ヲタネ 乙侍
(髪長) (大田根姫)
ウムコノナ ヒウカソツヒコ うむこのな ひうかそつひこ 生む子の名 ヒウガソツヒコ
(日向襲津彦)
マタソヲノ ミハカセウムコ またそをの みはかせうむこ また曽於の ミハカセ 生む子
(襲武) (御刀姫)
トヨクニノ イムナソヲヒト とよくにの いむなそをひと トヨクニの 斎名 ソヲヒト
(豊国別)
ヒウカキミ ひうかきみ 日向君
スヘラキノミコ すへらきのみこ 皇の御子
ヲハヰソヰ メハフソムスヘ をはゐそゐ めはふそむすへ 男は五十五 女は二十六 総べ
ヤソヒナリ ヲヲウスオヨヒ やそひなり ををうすおよひ 八十一なり ヲヲウスおよび
(ヲウス)
ヤマトタケ ヰモキイリヒコ やまとたけ ゐもきいりひこ ヤマトタケ ヰモキイリヒコ
(オウス) (イモキヒコ)
ヰモノヒメ ワカタラシヒコ ゐものひめ わかたらしひこ ヰモノ姫 ワカタラシヒコ
(ワカタリヒコ)
トヨクワケ ムタリヲミコノ とよくわけ むたりをみこの トヨクワケ 六人 親王の
(トヨクニワケ)
ナオオフル アマリナソヰコ なおおふる あまりなそゐこ 名を帯ふる 余り 七十五子
クニアカタ ワケオサムソノ くにあかた わけおさむその 国 県 分け治む その
スエオオシ すえおおし 末 多し
ソフホハツハル そふほはつはる 十二年 初春
(天鈴799年)
ミノノクニ カンホネカメノ みののくに かんほねかめの 美濃の国 カンホネが女の
(神骨)
ヱトトオコ クニノイロアリ ゑととおこ くにのいろあり ヱト トオコ 地の色あり
(姉妹)(遠子姫) (世の美)
ヲヲウスオ ヤリテヨハシム ををうすお やりてよはしむ ヲヲウスを 遣りて呼ばしむ
ヲウスミコ ミノニイタリテ をうすみこ みのにいたりて ヲウス御子 美濃に至りて
スカタミテ ヒソカニメシツ すかたみて ひそかにめしつ 姿 見て 密かに召しつ
トトマリテ カエコトナサス ととまりて かえことなさす 留まりて 返言なさず
コトシソヒ タケハヤタナリ ことしそひ たけはやたなり 今年 十一 丈は八尺なり
(ヲウス)
キミトカメ ミヤコニイレス きみとかめ みやこにいれす 君 咎め 都に入れず
アフミツキ クマソソムキテ あふみつき くまそそむきて 七月 クマソ 背きて
ミツキセス オシテササケテ みつきせす おしてささけて 貢せず オシテ 捧げて
ミカリコフ ハツキモチヨリ みかりこふ はつきもちより 恵り 請ふ 八月十五日より
ミユキナル ナノヰカイタル みゆきなる なのゐかいたる 御幸なる 九月の五日 至る
スハウサハ トキニスヘラキ すはうさは ときにすへらき 周防 娑麼 時に皇
サオノソミ サカイキタツハ さおのそみ さかいきたつは 南を望み 「逆生気 起つは
(邪気)
ツツカカヤ オホノタケモロ つつかかや おほのたけもろ 恙かや」 オホのタケモロ
(多の武諸木)
キノウナテ モノヘナツハナ きのうなて ものへなつはな 紀のウナデ モノベナツハナ
(菟名手) (物部夏花)
コノミタリ ヤリテカタチオ このみたり やりてかたちお この三人 遣りて形を
ミセシムル カンカシヒメハ みせしむる かんかしひめは 見せしむる カンカシ姫は
(他下二) (神夏磯媛)
ヒトノカミ ミツカヒキキテ ひとのかみ みつかひききて 人の頭 御使 聞きて
シツヤマノ サカキオヌキテ しつやまの さかきおぬきて 磯津山の 榊を抜きて
カンツヱニ ヤツカノツルキ かんつゑに やつかのつるき 上つ枝に 八握の剣
ヤタカカミ シモマカタマヤ やたかかみ しもまかたまや 八尺鏡 下 環珠や
シラハタオ トモヘニカケテ しらはたお ともへにかけて 白旗を 艫舳に掛けて
ワカタクヒ タカハスアメノ わかたくひ たかはすあめの 「我が類 違わず天の
メクミエン タタソコナフハ めくみえん たたそこなふは 恵み 得ん ただ害ふは
ハナタレカ ミタリマタカリ はなたれか みたりまたかり ハナダレが 乱りまだかり
(鼻垂) (=蟠る)
ナオカリテ ウサニタムロシ なおかりて うさにたむろし 名を借りて 菟狭に屯し
<天の> (菟狭川)
ナリヒヒク マタミミタレモ なりひひく またみみたれも 鳴り響く またミミタレも
(耳垂)
ムサホリテ タミオカスムル むさほりて たみおかすむる 貧りて 民を掠むる
ミケカワヱ マタアサハキモ みけかわゑ またあさはきも 御木川江 またアサハギも
(御木川河口) (麻剥)
トモアツム タカハカワマタ ともあつむ たかはかわまた 供 集む 高羽川 また
ツチオリト ヰオリモカクレ つちおりと ゐおりもかくれ ツチオリと ヰオリも隠れ
(土折) (猪折)
ミトリノノ カワサカタノミ みとりのの かわさかたのみ 緑野の 川境 頼み
カスメトル ミナカナメチニ かすめとる みなかなめちに 掠め取る 皆 要処に
アツマリテ オサトナノルオ あつまりて おさとなのるお 集まりて 長と名乗るを
<天の臣と偽り>
ウチタマエ トキニタケモロ うちたまえ ときにたけもろ 討ち給え」 時にタケモロ
ハカラヒテ アカキヌハカマ はからひて あかきぬはかま 謀らひて 赤衣 袴
ヒキテモノ ヒキテアサハキ ひきてもの ひきてあさはき 引手物 引きてアサハギ
(「携える」の意)
メシヨセテ コレニヒカセテ めしよせて これにひかせて 召し寄せて これに引かせて
(アサハギ)
モロクレハ フツクコロシツ もろくれは ふつくころしつ 諸 来れば 悉く殺しつ
(ハナ・ミミタレ)
(ツチ・ヰオリ)
ミユキシテ トヨノナカオニ みゆきして とよのなかおに 御幸して 豊の長峡に
カリミヤコ かりみやこ 仮都
メツキニイタル めつきにいたる 十月に至る
ハヤミムラ ヲサハヤミツメ はやみむら をさはやみつめ 速水村 長 ハヤミツメ
ミユキキキ ミツカラムカエ みゆききき みつからむかえ 御幸 聞き 自ら迎え
モフサクハ ネツカイワヤニ もふさくは ねつかいわやに 申さくは 「北西が窟に
フツチクモ ナハアオクモト ふつちくも なはあおくもと 二地蜘蛛 名はアオクモと
シラクモト ナオリネキノニ しらくもと なおりねきのに シラクモと 直入禰疑野に
ミツチクモ ウチサルトヤタ みつちくも うちさるとやた 三地蜘蛛 ウチサルとヤタ
クニマロト コノヰツチクモ くにまろと このゐつちくも クニマロと この五地蜘蛛
トモカラノ チカラツヨキオ ともからの ちからつよきお 朋族の 力 強きを
アツメオク アナカチメサハ あつめおく あなかちめさは 集め置く 強ち召さば
イクサセン ココニスヘラキ いくさせん ここにすへらき 戦 せん」 ここに皇
ススミヱス クタミノムラノ すすみゑす くたみのむらの 進み得ず 来田見の村の
カリミヤニ ハカリテイワク かりみやに はかりていわく 仮宮に 議りて曰く
モロウタハ クモラオソレテ もろうたは くもらおそれて 「諸 打たば 蜘蛛等 恐れて
(一斉に打って出れば)
カクレント ツハキオトリテ かくれんと つはきおとりて 隠れん」と 海石榴を採りて
<窟に>
ツチトナシ タケキオエラミ つちとなし たけきおえらみ 槌となし 猛きを選み
ツチモツテ ヤマオウカチテ つちもつて やまおうかちて 槌 以て 山を穿ちて
クサオワケ イワヤノクモオ くさおわけ いわやのくもお 草を分け 窟の蜘蛛を
ウチコロス イナハカワヘハ うちころす いなはかわへは 打ち殺す 稲葉川辺は
チタトナル マタウチサルオ ちたとなる またうちさるお 血方となる またウチサルを
ウタントテ ツハキイチヨリ うたんとて つはきいちより 討たんとて 海石榴市より
ネキヤマオ コストキアタカ ねきやまお こすときあたか 禰疑山を 越すとき仇が
ヨコヤイル アメヨリシケク よこやいる あめよりしけく 横矢 射る 雨より繁く
ススミエス キワラニカエリ すすみえす きわらにかえり 進み得ず 城原に返り
フトマニミ ヤタオネキノニ ふとまにみ やたおねきのに フトマニ 見 ヤタを禰疑野に
ウチヤフリ ココニウチサル うちやふり ここにうちさる 討ち破り ここにウチサル
クタリコフ ユルサスユエニ くたりこふ ゆるさすゆえに 降り 乞ふ 許さず 故に
クニマロモ タキエミオナケ くにまろも たきえみおなけ クニマロも 滝へ身を投げ
コトコトク ホロヒヲサマル ことことく ほろひをさまる 悉く 滅び治まる
ソノハシメ カシハオノイシ そのはしめ かしはおのいし その始め 柏峡の石
(こうなる前)
ナカサムタ ハハミタアツサ なかさむた ははみたあつさ 長さ六尺 幅三尺 厚さ
ヒトタヰキ スヘラキイノリ ひとたゐき すへらきいのり 一尺五寸 皇 祈り
トヒアカル カレスミヨロシ とひあかる かれすみよろし 飛び上る 故 スミヨロシ
<戦勝の後> (志賀若宮八幡)
ナオリカミ モロハノヤシロ なおりかみ もろはのやしろ 直り神 両羽の社
(中臣・物主) (直入中臣神社・籾山八幡)
サラニタテ コレマツラシム さらにたて これまつらしむ 新に建て これ 祭らしむ
カエモフテ ネツキニイタル かえもふて ねつきにいたる 返詣 十一月に至る
カリミヤハ ヒウカタカヤソ かりみやは ひうかたかやそ 仮宮は 日向高屋ぞ
シハスヰカ クマソオハカリ しはすゐか くまそおはかり 十二月五日 クマソを議り
ミコトノリ ワレキククマソ みことのり われきくくまそ 御言宣 「我 聞く クマソ
ヱアツカヤ オトセカヤトテ ゑあつかや おとせかやとて 兄 アツカヤ 弟 セカヤとて
ヒトノカミ モロオアツメテ ひとのかみ もろおあつめて 人の頭 諸を集めて
タケルトス ホコサキアタル たけるとす ほこさきあたる 長とす 矛前 当たる
モノアラス ササヒトトカス ものあらす ささひととかす 者 あらず 少々 人と数
サハナレハ タミノイタミソ さはなれは たみのいたみそ 多なれば 民の傷みぞ
ホコカラス ムケントアレハ ほこからす むけんとあれは 矛 駆らず 平けん」とあれば
トミヒトリ ススミテイワク とみひとり すすみていわく 臣 一人 進みて曰く
クマソニハ フカヤトヘカヤ くまそには ふかやとへかや 「クマソには フカヤとヘカヤ
フタムスメ キラキラシクモ ふたむすめ きらきらしくも 二娘 煌々しくも
イサメルオ オモキヒキテニ いさめるお おもきひきてに 勇めるを 重き引手に
(「勇む」の連体形)
メシイレテ ヒマオウカカヒ めしいれて ひまおうかかひ 召し入れて 隙を窺ひ
トリコニス トキニスヘラキ とりこにす ときにすへらき 虜にす」 時に皇
ヨカラント キヌニアサムク よからんと きぬにあさむく 「良からん」と 衣に欺く
フタムスメ メシテミモトニ ふたむすめ めしてみもとに 二娘 召して御許に
メクミナス アネノフカヤカ めくみなす あねのふかやか 恵なす 姉のフカヤが
モフサクハ キミナウレヒソ もふさくは きみなうれひそ 申さくは 「君 な憂ひそ
ハカラント ツワモノツレテ はからんと つわものつれて 謀らん」と 兵 連れて
ヤニカエリ サケオアタタニ やにかえり さけおあたたに 屋に帰り 酒をあただに
ノマシムル チチノミヱヒテ のましむる ちちのみゑひて 飲ましむる 父 飲み酔ひて
フストキニ チチカユンツル ふすときに ちちかゆんつる 臥す時に 父が弓弦
キリオキテ チチアツカヤオ きりおきて ちちあつかやお 切り置きて 父 アツカヤを
コロサシム スヘラキアネカ ころさしむ すへらきあねか 殺さしむ 皇 姉が
シムタツオ ニクミコロシテ しむたつお にくみころして シム 絶つを 憎み 殺して
オトヘカヤ ソノクニツコト おとへかや そのくにつこと 妹 ヘカヤ 襲の国造と
オチノコノ トリイシカヤト おちのこの とりいしかやと 叔父の子の トリイシカヤと
(セカヤ) (取石鹿文)
チナマセテ ツクシムケント ちなませて つくしむけんと 因ませて 「筑紫 平けん」と
ムトセマテ タカヤノミヤニ むとせまて たかやのみやに 六年まで 高屋の宮に
オワシマス ミハカセヒメオ おわします みはかせひめお 御座します ミハカセ姫を
ウチサマニ トヨクニワケノ うちさまに とよくにわけの 内添に トヨクニワケの
(ソヲヒト)
ヲミコウム ハハコトトマリ をみこうむ ははこととまり 親王 生む 母子 留まり
クニツコヤ くにつこや 国造や
(日向)
ソナヤヨヒソフ そなやよひそふ 十七年三月十二日
(天鈴804年)
コユカタノ ニモノニミユキ こゆかたの にものにみゆき 子湯県の 丹裳小野に御幸
キオノソミ ムカシオホシテ きおのそみ むかしおほして 東を望み 昔 思して
ノタマフハ ミヲヤアマキミ のたまふは みをやあまきみ 宣給ふは 「上祖天君
(ここではニニキネらしい)
→26文
タカチホノ ミネニノホリテ たかちほの みねにのほりて 高千穂の 峰に登りて
ヒノヤマノ アサヒニイナミ ひのやまの あさひにいなみ 日の山の 朝日に辞み
(ハラミ山)
ツマムカヒ カミシモメクム つまむかひ かみしもめくむ 妻 向ひ 上下 恵む
(サクヤ姫) (カモ)
カミトナル クニノナモコレ かみとなる くにのなもこれ 神となる 国の名もこれ
(賀茂)
カハカミノ アマネクテラス かはかみの あまねくてらす "カ" は上の 遍く照らす
モハシモノ アオヒトクサオ もはしもの あおひとくさお "モ" は下の 青人草を
メクマント ナルカミノアメ めくまんと なるかみのあめ 恵まんと 鳴神の雨
(雷)
ヨキホトニ ワケテミソロノ よきほとに わけてみそろの 良き程に 別けて満繁の
ウルホヒニ タミニキハセル うるほひに たみにきはせる 潤ひに 民 賑はせる
(「賑はす」の連体形)
イサオシハ カモワケツチノ いさおしは かもわけつちの 功は 上下別雷の
[賀茂別雷]
カンココロ カクソオホシテ かんこころ かくそおほして 神心」 かくぞ仰して
カミマツリ ミヤコノソラオ かみまつり みやこのそらお 神 祭り 都の空を
ナカムミウタニ なかむみうたに 詠む御歌に
[眺む]
ハシキヨシ ワキヘノカタユ はしきよし わきへのかたゆ 『愛し清し 我家の方ゆ
→40文
クモイタチ クモハヤマトノ くもいたち くもはやまとの 雲 出立ち 雲は大和の
クニノマホ マタタナヒクハ くにのまほ またたなひくは 国の幻 復棚引くは
(投影) (雲が幾重にも連なり広がるは)
アオカキノ ヤマモコモレル あおかきの やまもこもれる 青垣の 山も籠れる
(「籠る」の連体形)
(御諸山麓のヒシロ宮も)(豊かに栄えることを物語る)
ヤマシロハ イノチノマソヨ やましろは いのちのまそよ 山繁は 命の増よ
(山が繁ることは) (命の肥やしよ)
ケムヒセハ タタミコオモエ けむひせは たたみこおもえ 煙火せば ただ子 思え
(煮炊する煙を見ると) (直ぐに子等のことが思われる)
クノヤマノ シラカシカヱオ くのやまの しらかしかゑお 熟山の 白橿が枝を
(香久山) [精がし]
ウスニサセコノコ うすにさせこのこ 頭に挿せ 愛子』
(頭に挿して自身の山を繁らせ 愛しい子等よ)
ソヤヤヨヒ ミヤコカエリノ そややよひ みやこかえりの 十八年三月 都帰りの
(天鈴805年)
ミユキカリ イタルヒナモリ みゆきかり いたるひなもり 御幸巡り 至る 夷守
イワセカワ ハルカニノソミ いわせかわ はるかにのそみ 岩瀬川 遥かに望み
<し>
ヒトムレオ オトヒナモリニ ひとむれお おとひなもりに 人群を 弟ヒナモリに
ミセシムル カエリモフサク みせしむる かえりもふさく 見せしむる 帰り申さく
モロアカタ ヌシラオホミケ もろあかた ぬしらおほみけ 「諸県 主ら 大御食
ササケント イツミメカヤニ ささけんと いつみめかやに 捧げんと イヅミ姫が屋に
ソノツトエ そのつとえ その集え」
ユクウツキミカ ゆくうつきみか 四月三日 行く
クマノカタ オサクマツヒコ くまのかた おさくまつひこ 熊の県 長 クマツヒコ
ヱトオメス ヱヒコハクレト ゑとおめす ゑひこはくれと 兄弟を召す 兄ヒコは来れど
オトハコス トミトアニトニ おとはこす とみとあにとに 弟は来ず 臣と兄とに
サトサシム シカレトコハム さとさしむ しかれとこはむ 諭さしむ 然れど拒む
カレコロス かれころす 故 殺す
フソカアシキタ ふそかあしきた 二十日 葦北
コシマニテ ヒテリニアツク こしまにて ひてりにあつく 離島にて 日照りに暑く
ミツオメス ヤマヘコヒタリ みつおめす やまへこひたり 水を召す ヤマベコヒダリ
(山部小左)
ミツナキオ アメニイノレハ みつなきお あめにいのれは 水 無きを 天地に祈れば
イワカトニ シミツワキテル いわかとに しみつわきてる 岩角に 真水 湧き出る
コレササク カレニナツクル これささく かれになつくる これ 捧ぐ 故に名付くる
ミツシマソ みつしまそ 水島ぞ
サツキハツヒニ さつきはつひに 五月初日に
フネハセテ ユクヤツシロエ ふねはせて ゆくやつしろえ 船 馳せて 行く 八代ヘ
ヒノクレテ ツクキシシレス ひのくれて つくきししれす 日の暮れて 着く岸 知れず
ヒノヒカル トコエサセトノ ひのひかる とこえさせとの 「火の光る 処へ差せ」との
ミコトノリ キシニアカリテ みことのり きしにあかりて 御言宣 岸に上がりて
ナニムラト トエハヤツシロ なにむらと とえはやつしろ 「何村」と 問えば八代
トヨムラノ タクヒオトエハ とよむらの たくひおとえは 豊村の 焚く火を問えば
ヌシオヱス ヒトノヒナラス ぬしおゑす ひとのひならす 主を得ず 人の火ならず
シラヌヒノ クニトナツクル しらぬひの くにとなつくる 知らぬ火の 国と名付くる
(不知火)
セミナミカ タカクアカタノ せみなみか たかくあかたの 六月三日 高来県の
(からの)
フナワタシ タマキナムラノ ふなわたし たまきなむらの 船渡し 玉杵名村の
ツチクモノ ツツラオコロシ つちくもの つつらおころし 地蜘蛛の ツヅラを殺し
(津頬)
ソムカニハ イタルアソクニ そむかには いたるあそくに 十六日には 至る 阿蘇国
(=肥国)
ヨモヒロク イヱヰミエネハ よもひろく いゑゐみえねは 四方 広く 家居 見えねば
ヒトアリヤ キミノタマエハ ひとありや きみのたまえは 「人 在りや」 君 宣給えば
タチマチニ フタカミナリテ たちまちに ふたかみなりて たちまちに 二神 成りて
アソツヒコ アソツヒメアリ あそつひこ あそつひめあり アソツヒコ アソツ姫 現り
キミナンソ ヒトナキヤトハ きみなんそ ひとなきやとは 「君 何ぞ "人 無きや" とは」
キミイワク タレソコタエテ きみいわく たれそこたえて 君 曰く 「誰ぞ」答えて
クニツカミ ヤシロヤフレリ くにつかみ やしろやふれり 「地つ神 社 破れり」
トキニキミ ミコトノリシテ ときにきみ みことのりして 時に君 御言宣して
ヤシロタツ カミヨロコヒテ やしろたつ かみよろこひて 社 建つ 神 喜びて
(他動詞)
マモルユエ ヰヱヰシケレリ まもるゆえ ゐゑゐしけれり 守る故 家居 繁れり
アフミヨカ ツクシチノチノ あふみよか つくしちのちの 七月四日 筑紫州後の
(筑後)
タカタミヤ オホミケタオレ たかたみや おほみけたおれ 高田宮 大神木 倒れ
キノナカサ コモナソタケソ きのなかさ こもなそたけそ 木の長さ 九百七十丈ぞ
(約2,200m)
モモフミテ ユキキニウタフ ももふみて ゆききにうたふ 百 踏みて 往き来に歌ふ
アサシモノ ミケノサオハシ あさしもの みけのさおはし 『アサシモの 神木の竿橋
マヘツキミ イヤワタラスモ まへつきみ いやわたらすも 前つ君 礼 渡らすも
(身分ある人をも) (恭しく渡らせる)
ミケノサオハシ みけのさおはし 神木の竿橋』
キミトエハ ヲキナノイワク きみとえは をきなのいわく 君 問えば 翁の曰く
クヌキナリ タオレヌサキハ くぬきなり たおれぬさきは 「歴木なり 倒れぬ先は
アサヒカケ キシマネニアリ あさひかけ きしまねにあり 朝日影 杵島峰にあり
ユウヒカケ アソヤマオオフ ゆうひかけ あそやまおおふ 夕日影 阿蘇山 覆ふ
カミノミケ クニモミケトソ かみのみけ くにもみけとそ 神の御木」 国もミケとぞ
(三池)
ナツケマス なつけます 名付けます
ヤツメオコエテ やつめおこえて ヤツメを越えて
(八女山)
マエヤマノ アワミサキミテ まえやまの あわみさきみて 前山の 合岬 見て
キミイワク タタミウルワシ きみいわく たたみうるわし 君 曰く 「畳 麗し
(山並)
カミアリヤ ミヌサルヲウミ かみありや みぬさるをうみ 神 在りや」 水沼 サルヲウミ
(水沼県主猿大海)
モフサクハ ヤツメヒメカミ もふさくは やつめひめかみ 申さくは 「ヤツメ姫神
ミネニアリ みねにあり 峰にあり」
ホツミニイタル ほつみにいたる 八月に至る
イクハムラ ミケススムヒニ いくはむら みけすすむひに 的村 御食 進む日に
カシハテヘ ミサラワスレル かしはてへ みさらわすれる 膳方侍 御皿 忘れる
オサイワク ムカシアメミコ おさいわく むかしあめみこ 長 曰く 「昔 天御子
(ホオテミ)
ミカリノヒ ココニミケナシ みかりのひ ここにみけなし 恵りの日 ここに御食なし
カシハテカ ウクハワスレリ かしはてか うくはわすれり 膳方が 食瓮 忘れり
クニコトハ ミサラオウクハ くにことは みさらおうくは 国言葉 御皿を食瓮
ヰハモコレ カカルメテタキ ゐはもこれ かかるめてたき 飯瓮もこれ かかる愛でたき
タメシナリ ためしなり 例なり」
ソコホナカヤカ そこほなかやか 十九年九月八日
(天鈴806年)
マキムキノ ミヤニカエマス まきむきの みやにかえます 纏向の 宮に帰ます
フソサミヱ キサラキヨカニ ふそさみゑ きさらきよかに 二十年 サミヱ 二月四日に
(天鈴807年)
ヰモノヒメ クスコウチミコ ゐものひめ くすこうちみこ ヰモノ姫 クスコ 内親王
イセノカミ マツルイワヒハ いせのかみ まつるいわひは 妹背の神 祭る祝は
ツクシムケ ヒメコトシソヨ つくしむけ ひめことしそよ 筑紫平け 姫 今年 十四
ヤマトヒメ コトシモモヤツ やまとひめ ことしももやつ ヤマト姫 今年 百八つ
ヨロコヒテ ヨハヒイタレハ よろこひて よはひいたれは 喜びて 「齢 至れば
ワレタリヌ ワカヤソモノヘ われたりぬ わかやそものへ 我 足りぬ 我が八十モノベ
ソフツカサ ヰモノニウツシ そふつかさ ゐものにうつし 十二司 ヰモノに移し
ツカエシム クスコオカミノ つかえしむ くすこおかみの 仕えしむ」 クスコを神の
(アマテル)
ミツエシロ タケノミヤヰニ みつえしろ たけのみやゐに 御杖代 丈の宮居に
ツツシミテ ツカエハンヘル つつしみて つかえはんへる 謹みて 仕え侍べる
ヤマトヒメ ウチハタトノノ やまとひめ うちはたとのの ヤマト姫 内端殿の
イソミヤニ ヒラキシツカニ いそみやに ひらきしつかに 磯宮に 開き 静かに
(「御開き」の意)
ヒノカミオ マツレハナカク ひのかみお まつれはなかく 日の神を 祭れば 永く
ウマナクソ うまなくそ 倦まなくぞ
フソヰホフミハ ふそゐほふみは 二十五年七月初日
(天鈴812年)
タケウチニ ホツマシルヘノ たけうちに ほつましるへの タケウチに ホツマ知る侍の
ミコトノリ キタヨリツカル みことのり きたよりつかる 御言宣 北より津軽
ヒタカミヤ カクノヤカタニ ひたかみや かくのやかたに ヒタカミや 橘の館に
ミチオキク モトヒコイワク みちおきく もとひこいわく 道を聞く モトヒコ 曰く
クニシルノ ミチハイニシエ くにしるの みちはいにしえ 「国 知るの 道は往にし方
カミノリカヰノアヤ かみのりかゐのあや 【神乗り粥の文】
ネノクニノ オホキノマツル ねのくにの おほきのまつる 根の国の 大きの祭る
[多き]
カミノミケ ネシモノスエノ かみのみけ ねしものすえの 神の御供 十一月の末の
ユミハリニ カミノリカヰハ ゆみはりに かみのりかゐは 弓張に 神乗り粥は
(11月23日=冬至) (=黒豆飯)
クロマメト ウムキトスメト くろまめと うむきとすめと 黒豆と 大麦と小豆と
ナナノヨネ カヰニカシキテ ななのよね かゐにかしきて 七菜の米 粥に炊ぎて
ウケミタマ ヰハシラマツリ うけみたま ゐはしらまつり ウケミタマ 五柱 祭り
(新嘗祭)
トシコエハ ウムキトスメト としこえは うむきとすめと 年越は 大麦と小豆と
ヨネムマス トシノリヤマサ よねむます としのりやまさ 米 蒸ます トシノリ ヤマサ
(歳徳神)(八将神)
オニヤラヰ ムツキナアサハ おにやらゐ むつきなあさは 鬼遣らい 一月七日 朝は
ナナクサノ ミソニヰクラヤ ななくさの みそにゐくらや 七種の ミソに五臓や
モチノアサ ムワタマツリハ もちのあさ むわたまつりは 十五日の朝 六腑祭は
ヨネトスメ カミアリカユソ よねとすめ かみありかゆそ 米と小豆 神現り粥ぞ
ツチキミノ シムノマツリハ つちきみの しむのまつりは 辻君の シムの祭は
(サルタヒコ)
マメスメニ サカメトナナノ まめすめに さかめとななの 大豆・小豆に 盛豆と七菜の
ヨネカシキ アマコノカミノ よねかしき あまこのかみの 米 炊ぎ 天九の神の
ミシルカヰ みしるかゐ 坐しる粥」
ミオシルワサノ みおしるわさの 身を治る業の
イクサワニ トシナカラエテ いくさわに としなからえて 幾多に 歳 永らえて
ヨロヒトノ ミチノシルヘト よろひとの みちのしるへと 万人の 満ちの知る方と
アルフミオ ヨヨニツタフル あるふみお よよにつたふる 現る文を 代々に伝ふる
(著す文)
タケウチハ ツイニナカラフ たけうちは ついになからふ タケウチは 遂に中らふ
(中心たる)
ミチトナルカナ みちとなるかな 道となるかな
(典・範)
ネココロオ アカシカエリテ ねこころお あかしかえりて 根心を 明かし帰りて
<モトヒコに>
フソナキノ ソミカモフサク ふそなきの そみかもふさく 二十七年二月の 十三日 申さく
(天鈴814年)
ヒタカミハ メヲノコカミオ ひたかみは めをのこかみお 「ヒタカミは 女男の子 髪を
アケマキニ ミオアヤトリテ あけまきに みおあやとりて 揚巻に 身を紋取りて
(刺青)
イサミタツ スヘテヱミシノ いさみたつ すへてゑみしの 勇み立つ 総てヱミシの
(蝦夷)
クニコヱテ マツロハサレハ くにこゑて まつろはされは 地 肥えて 服わざれば
トルモヨシ とるもよし 取るも好し」
クマソソムキテ くまそそむきて クマソ 背きて
マタオカス カナツキソミカ またおかす かなつきそみか また犯す 十月十三日
ミコトノリ オウスミコシテ みことのり おうすみこして 御言宣 オウス御子して
ウタシムル オウスモウサク うたしむる おうすもうさく 討たしむる オウス 申さく
ヨキイテオ アラハツレント よきいてお あらはつれんと 「良き射手を あらば連れん」と
ミナモフス ミノノオトヒコ みなもふす みののおとひこ 皆 申す 「三野のオトヒコ
ヒイテタリ カツラキミヤト ひいてたり かつらきみやと 秀でたり」 葛城ミヤト
ツカワシテ メセハオトヒコ つかわして めせはおとひこ 遣わして 召せば オトヒコ
イシウラノ ヨコタテオヨヒ いしうらの よこたておよひ イシウラの ヨコタテおよび
タコヰナキ チチカイナキオ たこゐなき ちちかいなきお タコヰナキ チチカイナキを
ヒキツレテ シタカヒユケハ ひきつれて したかひゆけは 率き連れて 従ひ行けば
コウスミコ シハスニユキテ こうすみこ しはすにゆきて コウス御子 十二月に行きて
クマソラカ クニノサカシラ くまそらか くにのさかしら クマソ等が 国の盛衰
(情勢)
ウカカエハ トリイシカヤカ うかかえは とりいしかやか 覗えば トリイシカヤが
(を)
カワカミニ タケルノヤカラ かわかみに たけるのやから 川上に 長けるの族
(源流として)
ムレヨリテ ヤスクラナセハ むれよりて やすくらなせは 群れ寄りて 安座なせば
コウスキミ オトメスカタノ こうすきみ おとめすかたの コウス君 乙女姿の
ミハノウチ ツルキカクシテ みはのうち つるきかくして 御衣の内 剣 隠して
ヤスミセシ オトメノミメニ やすみせし おとめのみめに 優みせし 乙女の見めに
→9文
マシワレハ タツサエイルル ましわれは たつさえいるる 交われば 携え入るる
<コウスを>
ハナムシロ ミオアケミキノ はなむしろ みおあけみきの 花筵 身を上げ 酒の
<そこに>
タワムレヤ ヨフケヱヱレハ たわむれや よふけゑゑれは 戯れや 夜 更け 酔えれば
(「酔ふ」の已然形)
コウスキミ ハタノツルキオ こうすきみ はたのつるきお コウス君 肌の剣を
ヌキモチテ タケルカムネオ ぬきもちて たけるかむねお 抜き持ちて 長が胸を
(トリイシカヤ)
サシトホス タケルカイワク さしとほす たけるかいわく 刺し徹す 長が曰く
イマシハシ ツルキトトメヨ いましはし つるきととめよ 「今 しばし 剣 止めよ
コトアリト マテハナンチハ ことありと まてはなんちは 言あり」と 待てば「汝は
タレヒトソ スヘラキノコノ たれひとそ すへらきのこの 誰人ぞ」 「皇の子の
コウスナリ タケルマタイフ こうすなり たけるまたいふ コウスなり」 長 また言ふ
ワレハコレ クニノツワモノ われはこれ くにのつわもの 「我はこれ 国の強者
モロヒトモ ワレニハスキス もろひとも われにはすきす 諸人も 我には過ぎず
シタカエリ キミノコトクノ したかえり きみのことくの 従えり 君の如くの
モノアラス ヤツコカササク ものあらす やつこかささく 者 あらず 奴が捧ぐ
ナオメスヤ キミキキマセハ なおめすや きみききませは 名を召すや」 君 聞きませば
イマヨリハ ヤマトタケトソ いまよりは やまとたけとそ 「今よりは ヤマトタケとぞ
ナノラセト イイツオハレハ なのらせと いいつおはれは 名乗らせ」と 言いつ終れば
ヤマトタケ オトヒコヤリテ やまとたけ おとひこやりて ヤマトタケ オトヒコ 遣りて
トモカラオ ミナウチヲサメ ともからお みなうちをさめ 朋族を 皆 討ち治め
ツクシヨリ フナチオカエル つくしより ふなちおかえる 筑紫より 船路を帰る
アナトキヒ ワタリアラフル あなときひ わたりあらふる 穴門・吉備 渡り 粗ぶる
モノコロシ ナミハカシハノ ものころし なみはかしはの 者 殺し 浪速カシハの
モノヤカラ ミナコロシヱテ ものやから みなころしゑて 愚族 皆 殺し得て
フソヤホノ キサラキハツヒ ふそやほの きさらきはつひ 二十八年の 二月初日
(天鈴815年)
マキムキノ ミヤコニカエル まきむきの みやこにかえる 纏向の 都に帰る
ヤマトタケ モフスカタチハ やまとたけ もふすかたちは ヤマトタケ 申す形は
スヘラキノ ミタマニヨリテ すへらきの みたまによりて 「皇の 御霊によりて
クマソラオ ヒタニコロシテ くまそらお ひたにころして クマソ等を ひたに殺して
フツクムケ ニシハコトナク ふつくむけ にしはことなく 悉く平け 西は異無く
タタキヒノ アナトナミハノ たたきひの あなとなみはの ただ吉備の 穴門 浪速の
カシハタリ アシキイキフキ かしはたり あしきいきふき カシハ辺 悪しき気 吹き
(邪気)
ミチユクモ ワサハヒモトム みちゆくも わさはひもとむ 満ち行くも 災い回む
(世に永らうも) (災って回る)
アフレモノ ウミトクカトノ あふれもの うみとくかとの 溢れ者 海と陸との
ミチヒラク トキニスヘラキ みちひらく ときにすへらき 道 開く」 時に皇
クニムケノ イサオシホメテ くにむけの いさおしほめて 国平けの 功 褒めて
タマモノナシキ たまものなしき 賜物 為しき
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